酔っていた気がする 猫とパンだった気もする なんだったのかな

最後の列車だったと思う
駅に着いたのは
ここから自宅までかなり歩く気がして
いつも歩いてたっけ
駅のロータリーは静まり返っていた
人の気配すら無いように思える
なんでその駅に降りたんだろう



諦めて歩く事にする
眠かったし
でも正直どうでもよかった
寒かったし
早く帰れればよかった
疲れていた




道中
猫がいた
猫だったように思う
そう
猫がこっちを見ている気がした
寒かった とても



鞄からパンを取り出し
そのパンを
確かにパンを
その
前に置くことにする
猫の前に
酔っていたのかもしれない



確かにその猫はこっちを見たまま
うん
こっちを見ていた
礼のつもりか頭を下げたように見えた
こっちの眼を見て
風が吹いていて



食べている隙に頭を撫でようと考えて
人の気配はなかった
考えてなかったかもしれない
触りたかった
それは叶わずパンを持っていかれた
でも触れなかったんだ
逃げてしまって
猫は
その猫は
鞄から取り出したパンと
取り出したはずのパン




一陣の風が吹き抜ける
寒かったのかそうでなかったのか

そう風
猫の去った空間
気のせいかもしれない
猫はパンを食べたのかな




その風の中に
声のようなものが聞こえた 多分
鳴き声のような
風の音のような



でも
お礼のような気がした
猫が話すわけはない
そもそも猫は感謝なんてしないように思う
犬ならまだしも
猫は自分勝手だ
犬は頭が良い



その場から立ち上がる
帰らなきゃと思った
寒くなってきたし
そう寒かったんだ
犬は自分を人間だと思い
猫は自分を神だと思う
そんなジョークを思い出した
風も冷えてた
酔っていた気もする



街を見下ろすと
全ての明りが消えていた
とても眠かったし
夜も深かった
猫もいない
いつもはもう少し明りがついていた気がした
だけど
そんなことは気にしたこともないから
わからない
パンは確かに鞄から出した



そういや停電するっていう知らせが
来ていたような
来ていなかったような
なんだっけ
家に帰らなきゃ



空と街が逆さまになって
でも最終の列車だったんだ
別に逆さまになったって
寝転んでいたって構わない
猫もこっちをみていたし
確かに眼があった
風と共に消えた猫と



上に光る星が街の灯りに見えた
それは少し頭の奥の小さな部分を温かくしてくれて
酔っていたんだ
呑んだ気がする
パンは最初から無かったのかもしれない
かなり酔っ払っていたのかも
よくわからないが
何の話だっけ



そうそうあれは確か昨日の・・・