2007-02-01から1ヶ月間の記事一覧

泣きたい理由は見つからなかった

とても悲しい夢を見た 悲しすぎて目が覚めた時には全て忘れていた 目を開けた僕の頬には涙が流れていた 部屋の湿度に今日は雨だと思った 雲ひとつない空に雨の匂いもしなかった 余計悲しくなった 水っぽい一日 シャワーはいつもより多く弾けながら流れて 歯…

二人(4) - 妄り - side f

「ん・・・」 ゆらゆらと湯気が出ている彼の背中 彼の力が抜けるのを見計らって抱き留める このときが一番好き 自然に力の抜けた二人 折り重なって心地よい眠気に漂う 荒い息と早鐘打つ心臓 目の前にある耳たぶにキス もう眠っているのか鈍い反応 全部が愛お…

二人(3) - 契り - side m

「うん」 左手で彼女の頭を抱えながら彼女を下に 髪を撫でて舌を絡めながら少しずつ彼女の中にカラダをうずめる 暖かく濡れた入り口からゆっくりと包まれて行く 彼女のオンド 彼女のトイキ 彼女のシナリ 彼女のニオイ 奥まで辿り付いて一息つくようにキスを…

二人(2) - 絡まり - side f

「このキス好き」 そういって微笑みながら彼の唇に咬み付く 温度の上がった息で少し開いた唇 そっと舌を差し込まれる その舌に自分の舌で触れる 意識が感覚に感覚が舌に 自分の体が舌だけになったように錯覚する 柔らかくて濡れていて淫靡で愛しい赤 口紅よ…

二人(1) - 交わり - side m

広めの和室 かすかに畳の伊草の匂い 部屋の裏からは渓谷の水の落ちる音 二つ並べて敷かれた少し冷たい布団 もぞもぞと腕の中でうごく小さな後ろ頭 そっと頭を近づける シャンプーとは違う風呂上りの女の匂いが脳の芯にまで拡がる 冷たい足先 絡んだ腿から熱…

魂響に零れる雫

頭蓋の裏にこびり付いたタールみたいな思念 じわっと滲み出して頭の中を覆う 脳を取り出して頭蓋の裏を爪か何かで剥がしたくなる 深い深い緑色した暗い感情がふつふつと目を開き始める 体を巡る血液が同じ色に染まる やがて肌や爪や髪の毛までも 変わり果て…

家の中にある異空間

何も身に着けていない女の身体 大きな三面鏡 カーブを描く洗面台 自分の事をキライな私 正直この場所を好きになれない 今週は立て続けに無駄話会議があった 皮膚がうんざりしている 週末はゆっくり休ませよう ふっと青い香水の匂い オトコのカラダの匂いと交…

裂傷

胸が締め付けられるような苦しさ 息を絶え絶えに吸い込む 吸い込んだ空気 受け付けない身体が咳き込み戻す 目の奥が熱い 涙のようなものがこみ上げる けれど決して溢れる事なく 乾いた目 目の奥で渦を巻く熱を帯びた液体 泣けない身体 心が身体から剥がれて…

すぐ傍に居る

のになぜか置いて行かれている気がする その凛とした横顔に どうしたらいいかわからなくてとりあえず甘えてみる 頭を撫でられてちょっと切なくなった

いまここに在る当たり前の幸せ

清潔なベッドに身体を横たえるキミ 繋がれた数本の管 この小さな管がキミの命を繋いでいると思うと涙が出た ここに来るまでの数日間は常に考えていた なんて声を掛けようかと それだけを考えて考えて考え抜いてきた けれどキミとキミを含めた周りの景色を見…

悦び - 天国でも見えるのかな

押し広げていく 受け入れられていく 襞が擦れる 善がって捩れる肢体 埋め尽くしたときに漏れる声 赤く濡れた口と舌 うっすらと開いた空ろな目 もっと気持ち良さそうな顔診せて

悦び - ずっとここに居て

ぬるりと音もなく中に入ってくる しなやかに私の壁をなぞる ぽっかりと空いた心の空洞にぴったりと吸い付く 体と心と頭がひとつに満たされる 体が喜び背筋がぞくぞくする それが心に伝わり体は更に欲する 体と心の震えに脳は甘く痺れる もっとしてどうにでも…

雪と僕

白く硬く透き通った木々 枝には雪でできた小さな森の動物達 フクロウにリスにコトリの群れ 躍動感に溢れる雪の造形 寒さに鈍くなる僕の指先

眠たい帰り道の途中で

午前5時半 夜と朝の間 紫と橙に空が滲んでいる 名残惜しそうに光放つ星達 このまま岐路を走りぬくのはなんだか勿体無く思えた なんで止まるの?と不思議そうにヘッドランプを向ける銀の車体 調子よく熱を帯びたエンジンを宥める 澄んだ朝の風が体を吹き抜け…

一番悲しい事

それは伝えたい事が伝わらない事 不器用な言葉は周りを傷つけていくだけ 場を作れてなくて或いは時期尚早で その機会を失ってしまう事もある 飲み込まれた言葉や空に消えた言葉 もう二度と戻ることはない だから少しずつでも進めるように自分を変える 今まで…

上手になんてできない だから何度でもやれる

僕らは飛び立つ練習をしてるんだ 途中で巣から落ちて死んじゃったりするのも居る お腹を空かせた強者に食べられちゃうのとか なんとか一日を生き延びて 合間に練習して飛び方を覚えて 少しでも遠く高く飛べるようになるまで それは砂時計の砂が一粒ずつ落ち…

暖を取らせてもらおうと足を踏み入れた古びた書店で

日に焼けた紙の匂いがする 物書きには甘く脳の芯を痺れさせるまたたびみたいなものだ 人を探しながら導かれるように奥へ歩いていく そこらじゅうに積もった埃 絵に描いたような書庫 起こさないでくれとでも言うように舞い上がる埃 足跡がくっきりと床に残る …

大切な人との可笑しな日々に

限りある中でなんでもしてあげたい 優しくできる人も限られているし 優しくできる間も限られている だから大切な人には限りなく優しくありたい 夜に狂い咲いた月の元で戯れていたい 同じように大切な人に狂って心から咲き誇りたい 綺麗に咲いたならば大切な…

暗い手触りに心の羽がいくつ捥げても

鋼鉄の翼が暗い夜に輪郭をはっきりと見せる 夜と道が絡み合ってひとつになっている 宵闇一色に自分のはっきりとした存在感 その存在感がはっきりとわかるほど実感する孤独 孤独の手触りさえ伝わってくる 一定のリズムを刻み続けるエンジン 心地良い振動にそ…