female

むせ返る様な雌の匂い

が肌にじっとりと絡む 窓から入る昼と夜の間の風がオレンジから青へと変わる 風に誘われて体の熱が運ばれていく 太陽の世界と月の世界が混じり合う様をセックスみたいだと思いながら眺めていた 肩に回る手 私と同じ仕組みでできてるとは思えない 大きくてな…

或る女

私には婚約者がいる。 けれど今、目の前にいる男は婚約者ではない。 友達のパーティで知り合った男。 別に特別な関係じゃない。 たまたま近くで会ったのでランチを一緒に取って、 話題だろうと思われる映画を見て、 感想を話しながらとろっとした淡いワイン…

どこかで蝶が羽ばたくと

例えばたまたま見た時計の数字の並びが自分の誕生日と同じだった そんな他愛のないこと それを見なければ特に何事もなかったはずの事 こそっと顔を出した小さな小さな出来事の破片 それをたまたま見つけてしまい拾い上げてしまった その無邪気な笑顔に影が見…

あなたが私にとって大切な人だから

だから嘘をつくの 嘘をついた事は責めないでって身勝手に思うけれど あなたの為に嘘をついたのって言いたいけれど ・・・なんでわかんないのかなって寂しく思って私は黙り込む

分水嶺

二人で歩いてきた道 歩くはずだった道 さよならって言葉で愛しさがなくなってしまえばいいのに 忘れたい忘れられない 肌の触り心地 一緒に眠る幸せな感覚 二人の体温

眠る前の僅かな - side f

こんな時間が幸せだから あっという間だから 窓を開けないで 夜よ明けないで 本当は眠りたくなんてなくて 夢の中でもあなたを感じるけれど そんなんじゃなくて もっとずっと

二人(4) - 妄り - side f

「ん・・・」 ゆらゆらと湯気が出ている彼の背中 彼の力が抜けるのを見計らって抱き留める このときが一番好き 自然に力の抜けた二人 折り重なって心地よい眠気に漂う 荒い息と早鐘打つ心臓 目の前にある耳たぶにキス もう眠っているのか鈍い反応 全部が愛お…

二人(2) - 絡まり - side f

「このキス好き」 そういって微笑みながら彼の唇に咬み付く 温度の上がった息で少し開いた唇 そっと舌を差し込まれる その舌に自分の舌で触れる 意識が感覚に感覚が舌に 自分の体が舌だけになったように錯覚する 柔らかくて濡れていて淫靡で愛しい赤 口紅よ…

家の中にある異空間

何も身に着けていない女の身体 大きな三面鏡 カーブを描く洗面台 自分の事をキライな私 正直この場所を好きになれない 今週は立て続けに無駄話会議があった 皮膚がうんざりしている 週末はゆっくり休ませよう ふっと青い香水の匂い オトコのカラダの匂いと交…

悦び - ずっとここに居て

ぬるりと音もなく中に入ってくる しなやかに私の壁をなぞる ぽっかりと空いた心の空洞にぴったりと吸い付く 体と心と頭がひとつに満たされる 体が喜び背筋がぞくぞくする それが心に伝わり体は更に欲する 体と心の震えに脳は甘く痺れる もっとしてどうにでも…

無くて七癖

彼のペースに合わせて歩くのもだいぶ慣れてきた 彼も私と歩くときは普段よりゆっくり歩いてくれている 私が彼と居る事で彼の足を引っ張っているのかななんて思ったりもする 煮詰まった仕事の苛立ちで深く呑んだ夜に聞いてみた事がある 彼は彼特有の照れたよ…

背中を眺めていたら

わたしに力があったら あなたを抱き締め殺してしまうかも

恥を捨てろ、考えるなバトン - side f

綺麗な言葉だけじゃわたしは振り向かないの 言葉や態度じゃなくて欲しいのはきみ 【雪】 雪のような白い肌を傷つけたいの ほら新雪ってなぜか汚したくならない? 【月】 冷たく優しい孤独な月みたいなきみ 皆に優しくなんてしないで覆い隠してあげる 知って…

待ってる? 付いてく?

もぞもぞと動くシルエット 「ん゛...夜食でも買いに行くの?」 「あ 起こしちゃった? うん ちょっと眠れなくて」 「じゃあ あたしあったかいココアでいいよ」 不意に涙がぼろぼろと出てきた 「え どうした? 怖い夢でも見た?」 「ううん なんでもない …

無意味だなんて笑うけれどそもそも取り違えているのはあなたの方

あたしが喋る言葉やメールに意味なんてないよ? あなたに聞いて欲しいとかあなたに解決して欲しいとか そんなこと思ってない こっちを見て欲しいだけだから 少しでもこっちを見たらあたしの目的は達成されてるの だからあたしはやっとこっちを見たっ!って思…

なんか弱さとか隙とか君のそーゆーところ - side f -

歩きにくい靴を脱ぎ捨てる 今日も歩いた足がだるい 鞄を置いてコートを掛ける ストッキングを脱ぎ捨ててリビングへ むくんだ足にフローリングが気持ち良い 灯りをつけたまま着のみ着のまま眠りこけている物体 だらしなく捨てられた鞄とコートを掛けてやる お…

世界には矛盾を

離れていても変わらない どれだけ距離が離れても 遠い時間を過ごしても ぴったりと吸い付く空気 少しオトナになった肩に収まる小さな頭 無意識に髪に触れる手 何もかも欲しがって空へ伸ばしていた手 手に入れたものを抱える 少し年をとった骨張った大きな手 …

100回の・・・

100回のスキよりも 100回手を繋ぐよりも 100回のキスよりも 100回の囁きよりも 100回の抱擁よりも 100回カラダを合わせるよりも 1回・・・ たった1回妬いてもらう方が安心する つまらない喧嘩がしたくて あなたの感情を見てみたくて つ…

無題

二人の人生がもうこの先二度と交わる事はないんだね 偶然顔を合わせる事も無いだろうから 一月程前に会ったあの日が最後だね 最後になるってわかってたら 大きな手に指を絡めて街を歩くのが好きだった 少し照れた顔でキスしてもらうのが好きだった 毎朝何度…

きみのかお

働いているきみを見ている 仕事っていう一点だけを見ているその目 振り返ったときの凛々しい横顔 ちょっとかっこいいなって思うよ 休憩時間につっぷして眠っているところとか 仕事以外の話題に億劫でついてこないところとかは なんだかなぁって感じだけど ず…

車通勤

朝露のような霧雨 あまりの湿度の高さにうんざりする 空はうっすらと雲を残して晴れ渡ってるのに 雨に濡れた青い葉の匂いを大きく吸い込む キーを回して車は目覚めよく唸りを上げる 助手席からみるあなたは真剣な目で エアコンが効き始める 路面は太陽を反射…

邯鄲の夢(2) - side f - 夕立

どんなに饒舌な日でも寡黙になるね 体を預けるように守ってくれるようにゆっくりと動く 大粒の汗がひとつひとつ落ちてくる 暑さと熱さからは考えられないほど冷たい粒 少しずつ昇って逝って達っしてしまう 抱きしめる事もできなくなる 程なく離れる気配 かち…

邯鄲の夢(1) - side f - 熱夜

蒸し暑い私の部屋 風の流れを良くして日中に溜まった熱を逃がす この季節は窓を開けたこの場所が一番気持ちが良い いつもの癖で空よりも下にあるビールの自販機に目が行く まだ灯りがついている 今日は一人で帰ってきたんじゃなかったっけ じめじめと鬱陶し…

名も無き日々に捧げる

一緒にいても寂しくて淋しくて 一時の人の物とは思えない感情に流されて 気が付いた時には・・・ 始まりは何時もいつも運命だと思えるのに 続ける事の蛇行と惰性の渦と天啓のように時折差す魔 終わりは何時もいつも唐突で滑稽で どうかしてるのかな・・・ 心…

波の音が聴こえる

ざーっ っと返しては ざーんっ と寄せる 母に抱かれて感じていた鼓動や 嵐の夜に歌ってくれた子守唄 甘いような酸っぱいような そんなものにどこか似ている 浜に流れる濡れた砂が行ったり来たり 絶えず砂時計をひっくり返している 単純な作業の繰り返しを飽…

均衡

深入りするのが怖くって 自分が変わってしまうのを受け入れられなくて なんで手放しちゃったんだろうって まだ元に戻るかな そんなはずないよね 同じ所をぐるぐるぐるぐる回ってる 一緒にいても圧し掛かる灰色の不安 息が苦しくなって目から光が消えてしまい…

出会いと別れ

今じゃもうよく思い出せない あの日この交差点で出会って 何かに怯えて寄り添って 夕日に伸びる影も 夜に飲まれる影も シーツの上の影も あなたがくれた言葉がこの胸に刺さったまま この交差点に一人で佇んでいる 未来に怯えて立ち竦んで 夕焼けに繋いだ手も…

褪せて慣れて

笑った貴方の顔と声を想像する 輪郭のぼやけた表情に聴こえない声 デジタルに変換された情報なんかじゃ足りない どれ位離れているんだろう 独りが寂しいんじゃなくて 貴方がいないんだって思うから 貴方に会いたいと願う熱い気持ち ぐるぐると渦巻いて少しず…

風来坊

いつも突然電話が掛かってくる 彼だけの着信音が私の心を揺らす 忘れそうなタイミングで 待ってたなんて思われたくないから つい冷たくアシラウ それこそお見通しなのか なんてことのない冗談で返される やっぱり悔しい 私が一方的に想っているみたいで 待つ…

離れたら罪に消されてしまう そんな気がして

「出会ってはいけなかったんだよね」 自分を責める振りをして相手を傷つける わがままな傷を喜んで受け入れる 綺麗に整いすぎた生活感の無い部屋 彼すらその部屋に置かれたオブジェクトみたく見える 私もそうなのかな とにかく居心地が良いとは言えない 罰を…