波の音が聴こえる

celame2006-07-11

ざーっ


っと返しては


ざーんっ


と寄せる



母に抱かれて感じていた鼓動や
嵐の夜に歌ってくれた子守唄
甘いような酸っぱいような
そんなものにどこか似ている


浜に流れる濡れた砂が行ったり来たり
絶えず砂時計をひっくり返している
単純な作業の繰り返しを飽きもせずに続けている
なぜだか見ていても退屈じゃないから不思議だ


ざーっ


ざーんっ



「その時が来たら僕は砂に還っちゃうんだ」



そんな台詞信じられないよ 馬鹿じゃないの?
あまりに突拍子も無くて笑えもしなかった
好きな子ができたならそう言えばいいじゃない
それはそれでむかつくけど


ざーっ


見た事もないような穏やかな眼と
柔らかく開いた唇
どきどきして抱きしめた


ざーんっ


「風にさらわれて世界中を旅してくるよ」



本当に砂になってしまった
頬に僅かについた砂
掌に残った温かい砂
なんで海なんて眺めてるんだろう


ざーっ


それはきっと海がどこまでも拡がっていて
その先はきっと思い描いた未来という夢想
もしかしたら海の向こうでまた会えるかな
雲の隙間から漏れる希望にも似た日差し
流れない涙と痛む胸の想いを風に流して


ざーんっ


失くしてから大切だって気づくんじゃなくて
失くすから大切だったって思うのかな
掌の砂を握り締める
まだこぼしちゃいない
この手に掴んだ大切な・・・
小さなビーカーに入れて種を植えよう
溢れる想いを水に変えて注ごう
きみという名前をつけて