2006-04-01から1ヶ月間の記事一覧

滲む自我

周りはなんだか穏やかじゃなくて 悲しい事や辛い事が僕を突き抜けていく 他人事だからってそっぽ向いても なぜだか割り切れない曖昧な違和感 人間って寂しいねなんて 垢が落ちるように口から吐き出された心にも無い台詞 グラスを傾けながら僕の上で喉を鳴ら…

思行吟

下らない事で互いに機嫌を悪くして 居心地の悪い空気から逃げたくて上着を着る 不安そうにみるきみを置いて夜の闇へ 外は思いのほか明るく照らされていて 目を瞑っても煌々と滲む人の光 皮膚の下がざわついて落ち着かない 何も見えない真の闇を見てみたい 繰…

おいしい夜食の作り方

平日最後の電車から降りる 駅を出ると人影もタクシーも疎らだった少し離れた所にある閉まらないスーパーへ歩く 電話で今日のメニューを聞くが 「おいしいものー」 何の役にも立たない答えが返ってくる 深夜のスーパーには色白の店員以外誰もいない 目に留ま…

風来坊

いつも突然電話が掛かってくる 彼だけの着信音が私の心を揺らす 忘れそうなタイミングで 待ってたなんて思われたくないから つい冷たくアシラウ それこそお見通しなのか なんてことのない冗談で返される やっぱり悔しい 私が一方的に想っているみたいで 待つ…

星に願いを

飲み過ぎてふらふらしながら歩く まだ夜の空気は肌に刺さる いつから手を繋がなくなったんだろうな 夜に疲れた人を集める自動販売機の明かり 誰も通らないような所で誰かに見つけて欲しがっているみたいで 酔い覚ましの苦い珈琲を買う ミルクが飲めないから…

離れたら罪に消されてしまう そんな気がして

「出会ってはいけなかったんだよね」 自分を責める振りをして相手を傷つける わがままな傷を喜んで受け入れる 綺麗に整いすぎた生活感の無い部屋 彼すらその部屋に置かれたオブジェクトみたく見える 私もそうなのかな とにかく居心地が良いとは言えない 罰を…

不透明な世界で濁った眼には見えない その手に握られた銃

情報だけで分かった気になって世界を冷たく笑ってた 神様なんて人が作ったモノだろなんて 死んだら何もかも消えて終わるだけだって 誰にも近づかないから誰も近づかないでくれ 僅かな先も見えず目の前の危険だけを避けて 少しずつだけど確実に大きくなる内側…

悪夢

気がつくとだれかを殴っていた 僕はそのだれかに馬乗りになり殴り続けている 鈍い感触が真綿に包まれたようにさらに鈍い 握りきった拳からは血が噴出して肉が見えている そのだれかの顔は歪みきっている それでも僕は殴り続けている そのだれかはできの悪い…

白い威厳を放つ悲しみの塔

仕事を早く切り上げて幹線道路を飛ばす 日が落ちる前には着きそうだ 夕日が視界を遮る たまらずサングラスをかける 震える指先に苛立ちを覚える 動作のひとつひとつに余裕がない 受付を済ませてリネン張りの廊下を早足で抜ける 表札を見つけて部屋をノックす…

回り続ける世界を横目に時を止めた部屋

シーツの擦れる音 闇に響いて カーテンの隙間から見える世界は止まっていて 一切の時間を指し示すもののないこの部屋 甘い息遣い 頭の中に部屋の中に 世界から切り取られている部屋で 世界との繋がりを確かめるために 重ねる感触 ぬるくてずっと溺れていたい…

夢の続きのような現実感に乏しい朝

目が覚める まだ薄暗い カーテンを少し開けて外を覗く 重苦しい雲が圧し掛かっている 今にも泣き出しそうな空 ぐいっと包まったシーツを引っ張る骨張った手 寝室の空気が少し冷たい その仕種をみてその事に気付く 意地悪な微笑みが漏れる シーツごとその肌蹴…

祈り歩く人

空を仰いで月に祈りを 夜の闇の傍らに海の音を 捧げる祈りは彼の人の為に その月の影に その波のうねりに ディスプレイを見つめて メールに込める気持ち 無表情な文字から読み取るあなたの想い 息苦しい夜でも青白く光る携帯に救われる 着信に震える携帯に …

春の夢

すっと伸びた細い並木道 淡い桜の間から柔らかい陽射しが漏れている 何処か見慣れた景色 笑いながら君と歩いていた 不器用な手に抱え込んだ 傷ついて擦り切れて それが願いだったのか夢だったのか もう解からないそのカケラ そっと撫でてた 切り取られた日常…