おいしい夜食の作り方

平日最後の電車から降りる
駅を出ると人影もタクシーも疎らだった

少し離れた所にある閉まらないスーパーへ歩く
電話で今日のメニューを聞くが


「おいしいものー」


何の役にも立たない答えが返ってくる
深夜のスーパーには色白の店員以外誰もいない
目に留まった旬な食材を手に取りながらレシピを組み立てていく



ビニール袋を提げてドアを開け靴を足で放る
上着をソファーに掛けて手を洗いながら鍋を暖め包丁を水に晒す
ネットをチェックしながらグラスにビールを注いで調理に取り掛かる
まな板を叩く包丁の音が響く


「まだー?」


包丁の音が聞こえたらしい


「何がー? 別に呼んでないよー」


ドタドタと近づいてくる足音


「危ないから邪魔しないでよー?」


包丁を握っているときにじゃれつかれたら・・・
考えるだけで恐ろしい


「おなかすいたー」


わかったって 今作ってるから


「早くしてってのは食材に言ってくれ」


「むー」


「暇なら手伝ってよ これ切ってくれ」


「らじゃー」


・・・しまった
切ってくれとしか言わなかった僕が間違っていた
みじん切りにされるじゃがいも達・・・


「煮込みたかったんだけどそのじゃがいも」


目をぱちぱちさせてこっちを見ている


「あ・・・」


ようやく気付いたらしい


「まぁ いいや・・・それで」


無事に食卓に並ぶ料理


「おいしーねー さすがあたし」


・・・


「うん」



美味しいレシピの最後の調味料