白い威厳を放つ悲しみの塔

仕事を早く切り上げて幹線道路を飛ばす
日が落ちる前には着きそうだ
夕日が視界を遮る
たまらずサングラスをかける
震える指先に苛立ちを覚える
動作のひとつひとつに余裕がない



受付を済ませてリネン張りの廊下を早足で抜ける
表札を見つけて部屋をノックする



こんこん



「はーい どうぞ」



あっけに取られるほど普段の声
こういうときは花束でも持ってくるんだったか
今更ながらそんな事を後悔する
深呼吸をしてノブを回す



がちゃり



ベッドの上にお菓子や雑誌と一緒に座っている彼女
僕の方をみて信じられないという顔をしている



「どう?」



気の利いた言葉も思いつかず
なんだか訳のわからない台詞を言ってしまう



「・・・なんで・・・?」



「ん・・・なんかいろいろ聞いたから仕事切り上げて寄っただけ」



大きな瞳にみるみるうちに涙がたまっていく



なんで泣くんだよ・・・



「こんな・・・こんな格好・・・見られたくなくって」



ぼろぼろと零れる涙
誰かの花束やフルーツを横目にベッドの脇に座る



「友達が・・・来ても別に泣かなかったのに・・・」



涙と同じようにぼろぼろと零れる言葉
ぎしっと音をたてる使い古された金属の足



「なんで来るの? 来てほしくないから教えなかったのに・・・」



肩を震わせながら言葉をこぼし続ける
上着を着たまま肩に手を回す



「・・・なんだか顔みたら・・・ほっとして」



赤子をなだめる様にぽんぽんと頭をたたく



「・・・涙が・・・」



なんだか悪い事してしまったのかな
ほっとして泣くってどういうことだ



「会えるなんて思ってなくて・・・来てほしくなくて」



なんだか言ってる事もおかしいよ
女ってのは理解できない



「・・・ありがとう・・・」



最初からそれだけ言えばいいのにさ