邯鄲の夢(1) - side f - 熱夜

蒸し暑い私の部屋
風の流れを良くして日中に溜まった熱を逃がす
この季節は窓を開けたこの場所が一番気持ちが良い
いつもの癖で空よりも下にあるビールの自販機に目が行く
まだ灯りがついている


今日は一人で帰ってきたんじゃなかったっけ
じめじめと鬱陶しくて心細い帰り道
彼と歩くと楽しいし新鮮だ
何も無い部屋を見て唖然としているのか
さっきから動かずに立ち止まっている
その姿がなんだかおかしくて僅かに口元が緩んでしまう



こっちの方が涼しいよおいでよと手を広げる
一人では大きな窓際も二人だと狭い事に気が付く
汗ばんだ体からオトコノヒトの匂いがする
夜の灯りにぼんやりと浮かんだ抱きしめたくなるシルエット



思うより前に暑さに冒された体が動いていた
不器用に優しく髪を触れる大きな手
すぐさま移ってしまう主導権だから愉しませて
反応を見るのが好きもっと感じて
もっと見ていたいからまだ触れないでいて



快感なんかに邪魔されたくない