暗い手触りに心の羽がいくつ捥げても

鋼鉄の翼が暗い夜に輪郭をはっきりと見せる
夜と道が絡み合ってひとつになっている
宵闇一色に自分のはっきりとした存在感
その存在感がはっきりとわかるほど実感する孤独
孤独の手触りさえ伝わってくる
一定のリズムを刻み続けるエンジン
心地良い振動にそのまま身を任せてしまいたくなる
「目的地なんて無い方がいい」
何気なく口にした自らの言葉を心の中で反芻する
噛み砕くように意味を問う



数秒後に見慣れた標識
ナビゲーションは右に曲がれと示している
これから会うあの人のことを考える
日付が変わって一時間
軽く何か食べたいかもしれない
何が食べたいと聞いてもまともな答えは多分返ってこないだろう
この時間で軽く食べれる所を探しておこう
ウィンドウに映ったエージェントに条件を指定して検索させておく
好みの音楽を掛けて噛んでいたガムをダストケースに入れる



この翼が朽ちて枯れるまで飛び続けていきたい
心の暗いところをその存在で割いてくれる
脆弱で卑怯な心をその存在で圧倒してくれる
自らの影や闇に飲み込まれても決して離さない



待ち合わせ場所に近づくにつれて翼は顔を変える
優しく包むような穏やかな光を放って
僕と銀の翼