二人(1) - 交わり - side m

広めの和室
かすかに畳の伊草の匂い
部屋の裏からは渓谷の水の落ちる音
二つ並べて敷かれた少し冷たい布団
もぞもぞと腕の中でうごく小さな後ろ頭
そっと頭を近づける
シャンプーとは違う風呂上りの女の匂いが脳の芯にまで拡がる
冷たい足先
絡んだ腿から熱を感じる
緊張してるのか眠りにくいのか
またごそごそと頭が動く
見ているとくりっとした二つの目と目が合った
何も知らないような顔をしてこっちを眺めている
邪気の無いその仕草に頭の後ろをコツっと叩かれるような音でスイッチが入る
かすかに笑いが漏れる
おでこに唇を軽くつける
おどけた顔が笑顔に変わっていく
細い腕を首に回してくる
鼻の先がくっつきそうな距離で互いに見つめ合う
眼の奥をのぞく
首を少し傾げて目を瞑る
それに合わせて彼女も目を瞑って首を少しずらす
肌が近づく気配に自分の肌が奮い泡が立つ
少し湿った唇が触れ合い重ね合う
小鳥の挨拶みたいにくっつけては離したり
ゆっくりと感触を確かめるように唇で唇を咬み合ってみたり
キスで解る互いの相性
唇を離して鼻の先をくっつけて見つめる



「キス上手いね」
「このキス好き」