オドリツヅケル アンドロイド

celame2005-06-02

コンビナートの明かりが空をオレンジ色に点滅させる
遠くで定期的な蒸気が音を立てる
金属が擦れ、衝突する音が響く
周りは靄に囲まれ
空と海の境目は闇と汚れた空気で見えない



女は体をくねらせ舌を絡めてくる
私はただ女に体を任せる



私の熱くならない体を撫でる舌
設定された快感を促すように
一寸の狂いも無くそこへ導く
不能なわけでもないし
快感がないわけでもない
自分のもののように思えない感覚
この湧き上がる快感すら他人のもののようで
人としては失敗作だな



「何を笑っているの?」
「なんでもないよ」
自嘲的な笑みが思わず顔に出ていたようだ



女の口が私のものを包み、舐め上げる
私はポケットからカプセルを取り出し口に含む
淡いブルーの瓶に入った炭酸入りのアルコールで流し込む



いつからこんな風になってしまったのだろうか
ぼんやりした頭で記憶の海を漂う
別に快感に限ったことじゃない
何かに感動することも
何かに悲しくなることも
最近忘れてしまったようだ



世の中に失望して斜に構えているわけでもない
人が嫌い
交わるのが嫌い
そんなこともない
アンドロイドを差別している訳でもない
これはこれで今の正しい世界の姿だと思える
もしかして何もないんじゃないか?
浮き沈みなく閉じてるわけでもなく
開きすぎたが故の空虚



そう思うと急にバカバカしくなってきた
私のものもそれに反応したらしい
なんだまだまだ正常じゃないか
また口元が緩む



「すまん今日は少し飲み過ぎたみたいだ」
「そう わかったわ」



空をみると靄が晴れて
病的に白い月に見せるようにアンドロイドにキスを