厄日

一体何なんだ
忙しさとスピードと
狂気と疲れと
満ち欠けと反復と
それだけの毎日を稚拙な術で切り抜けてきた
精巧に組上げられたパズル
狂いを許さない秒針
その隙間にようやく辿り着いたってのに
そこは足場ではなくて虚無の奈落
何の為にここを目指していたかなんてとうに覚えていなかった
ぽっかりと空いた穴に傾れ込むそれ
果たされなかった約束
傷つけられた夢
泡沫の夜
心臓の奥深くを強く振動させる
そこから流れ出す紅海の濁流
そういや泳いでいるのを止めたら死ぬっていう魚がいたっけ
自分が自分の中へ流される
自分の中で身動きが取れなくなる
見ないように聴こえないように
ずっと怯えてきてたのか?
忘れてるつもりだったのか?
悪魔のような音が地を這うように響く
笑い声にも血に啼くようにも
声にならない言葉
言葉にならない想い
苦しくて胸を掻き毟る抉り出したい
解ってるよ
いつもこうな訳じゃない
どうにかやり過ごせばいいんだ
そのやり方だって知らない訳じゃない
慣れすぎて麻痺しているような感覚
褪せた心が置いていかれるのを嫌がるんだ
きっと
あの日の出来事や君の笑顔や彼の言葉や感じた風景とか
体の至る所に刻んだ全て
積み重ねて自分を形成するそれらがざわつく
最初は小さく
共振するかのように波紋は拡がって行く
心地よかった振動も余りに続くと怖くなってくるんだ
戻れないんじゃないかって
今居た筈の部屋が自分の中に埋もれていく
心臓の音が床や天井や壁や窓から聴こえる
僕が居た所は僕の闇に飲まれ蝕まれた
何時も見ていたんだなこっちを