不眠症

いずれ眠れるだろう
また目が覚めるだろう



シャカシャカというノイズに眠りを妨げられて目を覚ます
耳から外れたイヤホン
音楽に合わせてプレイヤーの液晶にはイコライザが動いている
その光を頼りに目薬を探す
乾いた目に染み込んでいく冷たい夜の感触



電車の音が部屋に紛れ込んで来る
多分最終だろう
それとも始発だろうか



すっかり目が冴えてしまった



のろのろと起きだしトイレへ向かう
格子状の窓の影が青く浮かんでいる
空は晴れ渡って月が出ているのかもしれない



キッチンで手を洗う
一人暮らし用の冷蔵庫を開けて飲み物を取り出す
無機質な色の部屋にさらに無機質なオレンジ色の光



部屋に戻ってベッドに入る
まださっきまでの自分のぬくもりが残っている
うつ伏せになり物思いに耽るふりをする
別に考えることなんてもうない
読みかけのまま枕元に放り出された本
ページを捲ろうとして思いとどまる
そういやこれ面白くなかったんだっけ



眠りの深さとか体の疲れとかあんまり関係はない
他にする事がしたい事がないから眠るだけだから



いずれ眠れるだろう
また目が覚めるだろう