仕事の合間に見た景色

飽きる事なく雨が降り続いていた
分厚い窓ガラスを叩き続ける
滲んだ外の景色とガラス越しに届かない外の音
穏やかな空調の音しか聴こえないこの部屋
呆れるくらいの整理された
吐き気がするほど清潔な場所
目の前で地震や天変地異が起きてもフィクションに見える気がする
例えそれが身近な人の死でも
ここからでは人の顔なんて見えない
誰も存在し無いかのようだ
遠くの木の揺れからも風が激しいのだと知る
今夜はここから動けないだろう
何もかもが揃っている仕事場
コンビニエンスストアにATMに本に雑貨
テニスコートにスポーツジム
シャワーにマッサージまである
環境としては文句のない仕事場
外とのガラスの境界で断絶された空間
慣れてしまえばどこも変わらないのだろうか
何かを満たせば満たすほど際立っていく満たされない空しさ
重く膨らんだ雲が太陽を飲み込んでいる
内側から照らされた雲は何か別の恐ろしいものに見えた
すっかり冷めたコーヒーをすする
煙草を一本吸って外の雲に吐く煙を重ねてみた
遠くの空に雲の切れ目が見えた