燃え盛る業火だけが身を焼く訳ではない

celame2007-06-02

疲れた。
いつになく疲れが残っている。
痛む目頭を押さえながら自宅へ。



ここの所、執拗な嫌がらせと悪戯電話で妻の美悠はかなり参っている。
電話番号を変えたり等の対策は取ったが、どこから漏れているのか対して効果はなかった。
自分が自宅に居ない平日の昼間ばかりを狙ってくる。
陰険なやつだ。



腹が立つ。
人間として恥かしくないのか?。



ヒステリックな美悠を相手にするには今日は疲れすぎている。
正直うんざりだ。
仕事の方もプロジェクトが佳境に入っている。
かなり忙しい。



なにもかも放り出したら楽になれるだろうか?。
そんなわけはない。
莫迦々々しい。



家に帰ると美悠は居なかった。
子供達が言うには外出しているらしい。
こんな時間に一体何処へ行ったんだ?。
念の為に友人や近所の人に電話を入れておく。
子供達は夕食は食べたらしい。
冷たくなった食事をこの精神状態で食べる気がしない。
ラップを掛けられた食事は、どこか気味の悪い物に見える。



子供達を風呂に入れて寝かさなければいけない。
思い立ち浴室へ行き、湯を張る。
音を立てて上がる湯気。
子供達は大人しくテレビを見ている。
こんな時間のテレビを見て楽しいのだろうか?。



疲れた。
何も気にせず眠りたい。
子供達を風呂へ入れる。
キッチンで換気扇を回し煙草に火を点ける。
何時から部屋の真ん中で煙草を吸えなくなったんだっけ。
なんとなくニュースを眺める。
キャスターから発せられる言葉は抑場がなく暗い。
読み上げられるニュースも同じような明度で。



気が付くと数十分経っていた。
根元まで灰になった煙草。
大して吸っていない。
相変わらずさっきのキャスターは同じ口調で喋り続けている。
子供達が風呂から上がってくる。
バスタオルを棚から下ろして渡す。
このまま風呂に入るか。
煙草の匂いのついたシャツを脱ぐ。
湯銭を見るとシャンプーか何かで泡だっている。



風呂も入れないのか。



あのやろう。



長男の悠希を呼びつける。
お前がしたのか?。
なんでこんな事をするんだ?。
泣きながらしどろもどろに答える悠希。
わからないだと?。
わからない訳ないだろう?。
悠希が入った後に入ろうとしたら泡だらけだ。
お前がやったんだろう?。
正直に言いなさい。
違うのか?。
説明してみろ。
暗い低温の炎が目の奥に見える。
悠希の首を掴んで湯船に押し込む。
意外と軽く持ち上がる。
暴れる腕を押さえる。
湯船から手を戻しさらに問う。
まだ自分じゃないと言うのか?。
悠希は震えながら泣いている。
泣けばいいと思ってるのか?。
再度細い首を掴んだ手を湯船に入れる。
まだわからないのか?。
なんでわからないんだ?。
なんとか言ったらどうだ?。



数回繰り返したところで炎は燻り収まり始めた。



一体何をしてたんだ。



大声で泣いている悠希。
その甲高い泣き声を聞いていると頭がおかしくなりそうだ。
ガムテープで口と手足を縛る。
ようやく静かになった。
4つ下の亜希が庇うように覆いかぶさっている。
目障りだったので二人とも玄関まで引き摺っていって放り出した。



鍵とチェーンロックを掛けて寝室へ。



何かから逃げるように冷たいベッドへ身を投げた。