音の無い夜 月が支配する黒 絡まる肢体

仕事帰りに君を拾ったのはいつだったっけ
薄いグレーでしなやかな髪を雨に濡らしていた君
青みがかった金属のような光を放つ瞳



媚びるような感じなんて全然なくて
むしろ・・・



その存在感に惑わされて
抱き上げて家に帰る
部屋に入ると
すぐさま
窓際の月と夜景が見える特等席に寝転んだ君
そこで濡れた髪を拭いてあげた
気持ちよさそうに身震いして
すぐ眠ってた



何ヶ月か経って
何時も月を見てた君が音も無く寝室に入ってきた
何も言わず
薄いグレーの髪を解いて



その身なり同様
とてもしなやかなカラダ
押し殺した声



月の魅せた幻のような夜



今日のような
存在感のある月をみると思い出すよ
月に向かって鳴くんだ
あの頃に届くように
自分の影のような色に染められた猫
また夜がやってくる
誰にも気づかれない様に