熱を出した子供

目を瞑ると聞こえてくる
遠いような近いような
近づいてくるでもなく
離れるでもなく
戯れるように
行ったり来たり
闇の足音
底の見えない足跡を付けながら



いつもの部屋
いつもの枕
でも自分だけが違うみたいに
光を裂くような違和感
馴染まない空気
何も変わっていない
足音に怯えているだけ?



柔らかい銀の砂の鉛筆
暖かな雪の絵の具
海水のインクのボールペン



どれも今は壊れていて
ただのガラク
大切なガラク
捨てたくなくて
自分を失うような気がして
とても寂しくて


捨てると失う
違うってわかっていても
荷物の重さに耐えられなくて
自分を失っても
それでも・・・なんて思ってる



そんなことを思ってた



真も善もとても曖昧に滲んで
偽も悪もそんなものはセカイには無くて
失うのが怖くて捨てられない弱さ
優しいって言葉に包まれて
自分の言葉はもう聴こえない



新しくなんか無い
重ねて磨り減って
支える盾の重さの分だけ
軽くなる槍
一刺しの強く儚い針のよう



荷物を思い出へ置いていく覚悟を今