満月

「静かだねぇ」
「もうこんな時間だからねぇ」

世界が寝静まった時間
一つの大きなお月様と
冬の主の寒さが流れる



「静かだとなんかうるさくしたくなるねぇ」
「そういう時は静かにしておくものよ」

身震いをすると首の鈴が小さく鳴り響く



「ふーん そんなもんかぁ」
「そんなものよ」

屋根の上にぽつんと座り込んでいる
不思議と寒くはない



「ずっと空を見上げてるけど飽きないのかなぁ」
「飽きないから見てるんじゃ無いの」

今にも落ちてきそうな
手を伸ばせば触れそうなお月様



「そういえばそうだねぇ」
「そうねぇ」

流れ星が遠くに消えた



「この景色っていつからあるんだろうねぇ」
「とても綺麗よねぇ」

朝の喧騒がウソのように時間の流れがゆったりしている



「ずっと見ていたいなぁ」
「あたしはそろそろ寝るわ おやすみなさい」

ひらりと屋根から降りる
それにならい後に着いて行く



空に浮かぶ大きな円い光りはそれを見て優しく笑っているようだった