いつもの風景

ずっと変わって行く波の音
ディスプレイに映る文字
点滅する信号
道端で風と踊る枯葉とビニール袋
前を歩く人の背中
電車の窓からいつも見える景色
戸棚に置かれた新聞の隅



コーヒーの匂いと立ち上る湯気
自転車のブレーキの音
机の上に置かれたポプリ
ビルの合間から入ってくる街の喧騒
窓に打ち付けて滲む雨粒
ポケットの中の携帯電話



道で目があった猫との止まる時間
他人行儀な冬の風
車のドアを閉めて吐く銀の溜息



ドアを開けたときの自分の部屋の匂い
読みっぱなしの小説
戸棚に飾られたグラス
枕元の水差しと目薬
蛍光灯を消すと気付く月の灯り