眠りにつく温度 - side m -

ひんやりと静まった部屋のドアを開ける
鞄とコートと上着を投げる
狙った所に落ちるそれらを見て満足する
金属がぶつかる音が部屋に響く
灯りをつけてソファに倒れこむ
自分の生活する匂いに落ち着く
暖かいココアでも淹れて温まろう
冷え切ったシーツを思い出して身震いする



身動ぎできない寝苦しさに目を覚ます
いつの間に眠ってしまったのか
落とされた部屋の灯り
掛けられた毛布
体に絡まる部屋着の女
寝苦しさの原因はコイツか
邪魔しやがって・・・
振り解いて立ち上がろうとする
突然子供が玩具を取り上げられたかのように顔がくしゃくしゃになる
センサーでもついてんのか・・・?
首に手を回されているのでそのまま持ち上げる
コイツが圧し掛かっていたせいか首や体の節々が痛む
(狭いところで眠ったからという可能性はこの際考えない)
寝室まであと少し
冷たいシーツの上にこの物体が起きないようにを降ろす
寝汗をかいた肌には気持ちがいいだろう
冷たいシーツに相殺されて丁度いい温度になる
隣に横になるとさっきとは打って変って穏やかな顔
眠ってても現金なヤツだ
見てて飽きない面白い
さっきまで近寄りがたかった眠るための場所
今は疲れを癒す瞬間唯一の場所