少年と竜

少年は竜に憧れた
誰をも近づけさせない凛々しさ
大空を力強く引き裂いていく翼
空気をどこまでも震わせる咆哮



少年は剣に怯えた
鈍く冷たい光を放つ金属
何かを壊す為のものと



青年は剣を取った
誰が為に
優しい心に突き刺さるのは己の剣



青年は竜を前にした
幾多の戦いを共にしてきた剣を手に
より強きを挫く事を理由に



青年は倒れる竜を見ながら泣いた
自分は何よりも恐ろしい怪物なのかもしれないと
やせた白い肌にその剣を携えて
返り血を浴びて紅く染まる頬は幼子のように



失くしてしまった剣を振るう理由
誰も戦いたくなんてない
そう言いながら笑って剣を振るう
誰もが同じ顔をしているから自らをも騙すのか
この世界でいつまで剣を振るい続けるのか
世界を旅する理由なんていくらでもあるのに