誰かの忘れ物

足元に音符を見つけた
土と埃にまみれて埋まっていた
小さな小さな記号
暖かい風の吹く日だった
辺りを掘り返したらもっと出てきた
自分の前の空間を楽譜にして音符を並べてみた
大きさがちぐはぐで少し疲れた音符達
なんだか並べてみると間の抜けた感じがする
歌おうと思ったら歌い方を忘れていた事に気が付いた
そういえばもう歌うことはできないんだった
この楽譜をきみの下に持って行きたいと思った
きみが歌ったらどんな曲になるだろう
暖かい風がその音符達を運んでいった
空の長い旅は案外暇なのかもしれない
風が歌っているのが遠くから聴こえた
暖かい陽射しの穏やかな日だった