からっぽ

うっすらと開いた目で何かを見ている訳ではない
ゆっくりと上下する胸もただ規則的に動いているだけ
部屋の中に置かれているオブジェクト
何も考えず何も見ず何も聞かない
ただひたすらにそこにある
不意に外で大きな音が聞こえ体がびくっと震える
あまりに無防備な状態な為に必要以上に体が反応してしまう
急に意識を戻されたぼくという入れ物
意識と体のズレ
その言い様のない違和感が不愉快に背中をくすぐる
意識と体を無理やり馴染ませるように息を深く吸い込む
体の中にぼくが居るぞと体に言い聞かせるように
体の主導権をぼくへと移すように
外にダイブして拡散して浮遊していたぼくの意識も途端にひとつに集まった為かまだ少し酔いが残っている
アルコールの酔いとも車酔いとも言えない
浅く思考が纏まらずに気を抜くと体から意識が零れ出してしまう
まるでぼろぼろの如雨露で水を運ぶときに底から少しずつ水が漏れていくように
そういやきみはぼくのこの癖がひどく嫌がっていた事を思い出した
これをやると人としての気配が消えるからと
二人で居るのに一人にしないでと
掴みどころのない人じゃなくて掴めない人は嫌と
そんな事を良く言われた
どうでも良い事を突然思い出すぼくの脳に少し面白いよと声をかけた