雨の音 雨の粒

遠慮したような小さな粒から
少しずつ強くなっていく



それに合わせて車が水溜りを撥ねる音
少し急ぐ人の足音
傘の上で遊ぶ粒達
収束しながら加速する



ひとつの楽曲のように


それは即興で
この瞬間のこの場所にしかない
名曲へと昇華する
この音を聴いている人のために



心地よい子守唄
心臓が雨音に合わせているのか
いつの間にか鼓動と同じリズム
小さい頃にこのリズムで眠ってた気がする
淡い甘い奥の記憶
ふっとまぶたの裏に映る
それは見ようとすると消えてしまう
掴めない景色



空から降る結晶
ひとつひとつに閉じ込められた
小さな
鮮やかな
記憶の鏡
滲んで跳ねて
泡沫の午後