玉響の水

その空に浮かぶ夢の丘は
いくつもの雲を貫いていた
とても眺めの良い所だったよ
遠くまで見渡せて
空気も澄んでた
鼓動の音が辺りに響く位静かで
楽しいことや悲しいこと
なんにもなかったけれど
とても高揚していた
少し寂しかったけれど
そこに誰かと行く事はとても難しいんだ
諦める事が簡単すぎるから



そこからいろんな所を見ていると
ある所では戦火が上がっていた
でもここから叫んでも何も聞こえやしないから
ただ眺めてた



ある所では善良な人が騙されそうになってた
でもここからじゃ教えることができないから
ただ黙ってた



ある所では気持ちのすれ違いで離れる男女がいた
でも何を言っても仕方ないし
見てると悲しくなるから
見ないことにした



この場所をお気に入りの場所にして
いつでもここに来れたらいいのに
何度そう思ったことか
ここにあの人を連れてこれたらどんなに幸せだろう
何度そう考えたことか
思いを馳せては溜息に乗せて空へ浮かべてた
そのうちここに居る事に飽きてきた
ここで見たものを皆に知らせようと思って
でも少しずつ降りる途中で
少しずつ忘れていってしまうんだ
自分の中のとてもとても深いところに
その景色が潜って行って
いくら思い出そうとしても
いくら掘り出そうとしても
ただただ沈み行く景色
まるで栄華を誇った城塞都市が焼け落ちるみたいに



なぜ雨が降るのか
なぜ滝は落ちるのか
それは多分独りだと寂しいから
そんな気がして
流れ落ちる心の儚さを綺麗だなって思えた