竜宮

少し変な味のカクテルのアルコール
網戸から入ってくる風が肌を撫でてく
出逢ったばかりの二人の時間
点けっ放しのテレビからは音楽の売り上げランク
交わす言葉もそんなになくて
沈黙を誤魔化すように手を取って抱き寄せた



慣れてないようで知らないようではなくてどこかぎこちない
吐息の合間から漏れる耳を澄まさないと聞き逃しそうな否定
サイズを計って合わせたようにしっくりと馴染んだ
天井が水に沈んで時計の針がゆっくりになる
大昔の海底の城での出来事みたいに
目を瞑ってしまったらあっという間に朝が来てしまう
とても穏やかに緩やかに流れて
現実との溝を残酷な程に拡げて行く


曖昧で簡単な始まり
それに習うように訪れる終わり
それもまた同じように曖昧で簡単で
離れた心だけがしゃぼん玉みたいに空に浮かんで消えた
なんでもないようなすれ違い
またなんでもないようなすれ違いで巡る
互いにずれた時計の針を合わせるように
言葉を紡げない様に口を塞いだ
心なんていらなくて愛なんて言葉だけで
恋人たちの儀式も何もかも必要なくて



ただただ二人がそこにいたから