飼猫

部屋の明りをつけなくても
外の明りのおかげでうっすらと見渡せる
明るい夜に排気ガスの塊のような雨雲が浮かんでいる
「自分の目に映る景色は自分の心の中の景色」
なんて言ってた人を今は恨む
天候すら嫌な気分にさせるなんて



部屋の扉を開けて腕の中に滑り込む彼女
物音ひとつしないまま



この腕を掴んだり、手を伸ばしたり
この体を愛くるしいお気に入りのおもちゃみたいに
一通り遊んで満足したのか
くるりとこっちを向いてにやっと笑う



持っていたグラスを横において
彼女の誘うような首筋に甘噛みを
部屋に彼女の吐息が木霊したような気がした
手をほどけない様に絡めて
細い髪の毛を撫でて



憂鬱な気分を察知してきてくれたような気がした
こんな仕種のひとつひとつに何時も救われてるんだろうな