キソクタダシイユレガネムリヲサソウ




規則正しい列車の揺れが眠りを誘う
週末のためか車内にはアルコール、タバコの匂いが漂う



ふと休みは何をしようかと思う



それは形にならないまま何処かへ流れてしまう




ガタン・・・!



少し強い揺れと共に列車が停止した
車内放送が流れる
「次の駅で停車中の列車がいる為〜」



なんだそういうことか・・・
珍しいなこんな時間に




周りの乗客もそう思ったのか
少しざわついている
この列車に乗っている人達で急いでいる人は少ないだろう
文句を言う体力も



もう少し音楽と共に頭を休めるとするか・・・




・・・





もうどれ位眠ったのだろう
体の節々の痛みで目が覚める



まだ動いてないのか・・・?



いや乗客の数は減っている・・・



景色は変わっていないような・・・?
どこも同じような風景で区別がつかないだけか・・・?



車内放送が流れる
「もう降りられるお客様はいらっしゃいませんか?
 この列車はこのまま車庫に参ります」




は・・・?
聞き間違いか?
もう終着駅なのか
寝過ごしてしまった
帰りはタクシーか何か・・・
ドアのほうへ歩く



もう車庫に入っている・・・?
長いトンネルのようだ
遥か向こうに外の灯りがうっすらと見える




どうなっているんだ・・・
停止したら車掌に聞きにいくか・・・
それにしても他の乗客はなぜ何も言わないんだ






きぃ・・・がた・・・ ガタン プシュー






止まった





早足で先頭車両へ向かう



列車のドアが蒸気を吐き出しながら開く
車内放送が流れる
「この列車はこれ以上お乗りになれません
 皆様お忘れ物のなきよう ご利用ありがとうございました」



乗客たちがぞろぞろと降り始める
何もしない乗客に少し腹が立ち
思わずなぜここで降りるんだと話しかける



相手は口元を動かさずに話しかけてくる
それも一人の声じゃない


あなたも乗っていたんでしょうあの列車に
大きな事故だったじゃないの
爆音と共に皆が死んでいくのを見たろう
空気を裂くような悲鳴を聞いたろう
地獄絵図を目に焼き付けたんじゃないのか
苦しみながら死んでいく顔を忘れるなんてできないよ



生き残った人達はもうここには居ないわよ
途中で降りていったから





ココハシュウチャクエキナノヨ