秋夜月音

空を舞う月が
風と交じる紅葉を妖しく燈らせる



緋く染まった葉と
少し若い黄蘗の葉が擦れる



夜の闇を彩り
揺れて織り成す色彩
月の冷たく優しい粒子が妖しさを添う



その月の粒がグラスに注がれた琥珀の水面へ落ちる
自身の影を僅かに紋が震わす



幾つかの粒子が白い息をする氷に当たり



からん



と音を点てる



その音を鍵に釣られて
息を潜めていた音達が伴奏を始める



風が紅葉を鳴らし
黄金の裾野も撓みだす
秋夜の主が
流れる律に合わせて命の音を生む



壮大な歌劇にグラスを掲げる