悲しい事 辛い事 それを失う方が残酷

どこか見覚えのある公園
夢の中の景色なんてそんなものだ
霧が掛かったように周りの景色は霞んでいる
目の前のマンションは遥か雲の彼方までのびている
その公園にはと同い年の女の子が
二人で一緒に遊んでいる
楽しそうに笑ったりしているが
一切の音は聞こえない
忘れそうになると見る夢
最後はいつも女の子が手をこちらに差し伸べる
そして何かを言って
ぼくは
子供のぼくは少し怖くなったのか
それともその強さに惹かれているのか
手を伸ばして掴もうとする
ここで掴めずに夢が終わる
いつもの夢だ



終わらない
顔は夕日が反射してよく見えない
いつもと違う
頬に流れる一筋
その小さな女の子の頬に涙が流れていた



いつもの朝
妙に鮮明に覚えている夢
鏡の中の顔には隈ができている



ここの所忙しかったからかな
気になるなあの女の子
虫の知らせとかじゃないよな



仕事を終えて帰宅すると一通のメールが
友達伝いに知り合いの女性が事故で亡くなった事を知る
そのメールに書かれた住所
目蓋の裏で火花が散る



この住所知っている・・・?
ぼくは一体・・・?
あれ・・・?
彼女は確か・・・?



日常が崩れる
違和感が襲いかかる
今という今が嘘になる
口にしてしまった事が現実になった
そんな自責の念に押しつぶされそうになる



夢に出てきていた公園
今ははっきりと思い出せる
次の日ぼくは急遽休みを取ってその公園へ向かう
今の自宅からは車で5時間程だった



そうだ
ここだ
あの子と遊んでた
どうして今まで思い出さなかったのか
公園のベンチには一人の男が座っている



頭がどうにかなりそうだった


愛しい


笑う時の白い歯


悲しい


淡い唇


怖い


流れる涙


逃げたい


柔らかい肌



お揃いのカップ


記憶


繋いだ手


自分


壊れた砂の城


時間


駆け上った階段


現実



頭が割れるように痛い


いろんなものが体を流れていく
制御ができない
それでも何かが出てこようとする
ますます混乱する
足りない



夕日を見ながら涙を流し続けるぼく
それをみてその男が声を掛けてきた



どうかしましたか?



いえ なんでもありません
すこし 悲しい事を思い出しまして



そうですか その悲しみを消したいですか?



?・・・
ええ まあ
なんで思い出したんだろうって



そうですか
もう分っていると思いますので
目を閉じてください



目の前を閃光が走る
確かこの男は
そうだ
ぼくは妹を愛してしまった
何もかもが罪になったあの日に
この公園で
悲しみを持っていって貰ったんだ
大事な想いと共に
そして夕日を背に消えていく彼女



目を覚ますいつもの朝
夢の中の公園にはもう誰も居ない