探し物という一人善がり

何を自惚れてたんだろうな
言わなくても分かるだろ?なんて
いつも思ってた
口にするのが気恥ずかしかったり
疲れていて億劫になっていたり
いつもいつも自分の事しか考えていなかったよ
口にするとその分だけ言葉が軽くなる気がしてね
愛の言葉っていうのは別に特別じゃないのにな
軽くなったりなんかしないのに
自分の放つ言葉に力を持たせたかったのかな
何のために?
それすらも欺瞞なんだろうな



本当は気づいてたんだ
中越しにたまにうっすらと涙を流しているのを
寂しそうに肌を合わせてくるときも
振り向いて上げれば良かっただけなのにな
なんでそんな簡単な事ができないんだって思うだろう?
そのときはどうしたらいいか分からなくてな
また同じ事をしてしまうかもしれないという
なんだか訳が分からない恐怖に竦んでいたんだ
誰かと一緒にいる事で罪を重ねて行くみたいでさ
共犯だって笑いあってた頃もあったよな
寝る前に枕元に置かれていた罪の虚像
流すための水差しも隣に置かれていたっけ
流し溜めた涙だったのかな あれは



磨り減っていく肌を合わせる事に少し疲れたんだ
悲劇を演じたかったのかもしれない
ふふ 哀れだよな
こんな貧困な考え自体が悲劇なのにな
それすら気が付かない程疲れていたんだ
疲れているのに眠れなかった
自分の脳髄の奥は何かを嗅ぎ付けてた
探し続けてた
そういうのってないか?
体は疲れているのに頭だけが冴えてるっていう



朝が来てさ
いつだったかな
とても寒かった
外は雪が降ってたな
隣で丸くなって寝ているのをみてふと思ったんだ



抱きしめて声を掛ける
それ以外にできる事なんてあるのだろうか?って
在ったとしても
それは本当に価値のあるものなのか?って
例えば寝てる間に毎日キスをしたとしても気が付かない訳だろう?
そういう事を繰り返してもあんまり意味はないんじゃないかと思うんだ
ああ 誤解しないでくれ
気持ちの問題だってのは分かってるさ 分かってる
気持ちを持ち合わせているのは大前提だからな もちろんだ



探しているのは
相手にとって分かりやすくて
且つ自分だけの愛を示す術
ってやつなんだよ
おかしな話だろ?