寝る前に光る携帯

疲れが体の至る所に残っている
自分の体の頼りない部分が際立って見える
歩く人はみな忙しそうに見える
自分だけが弱音を吐いているような



お酒を飲みに行く余裕も無くて
眠る前に陰鬱な酒をあおる
蛍光灯をつけると
その暗い部分が照らされてしまう
そんな下らない恐怖
迷子になった子供みたいに
月の明かりに頼る
思いのほか明るくて冷たくて優しい
青く照らされた酒が喉を焼く
舌が痺れる
心と脳も痺れて欲しいのに
どれだけ飲んでも頭は冴えていく
見上げるといつもの部屋が少し広く感じる
自分で自分を見下ろしているような感覚
まるで自分が部屋そのものになったように
座り込んでいる自分はそのままの姿勢で動かない



何秒か何分か何時間か経ったのだろうか
グラスの氷が溶ける音で気がつく



グリーンのランプをちかちかさせて携帯が知らせる
横になりながら君のいつもの普通すぎる声に戸惑う
慌てて取り繕う声が思わず裏返る
なんでもない会話をしながら思う
また落ち込んでるのね?って聞かれたらどうしよう
何かあったの?って聞かれたらどう答えよう
なんだか助けられてばっかりで情けないな
おやすみなさい