約束の地

捻じ曲げられた形で吐き出される浅黒い欲
この国のありとあらゆる工場とかスラムとか
そういう所から出された汚水を浄化して
その浄化に使われるパイプにこびりついた汚れ
そんなものが寄せ集められて
造られた掃き溜めのような夢の世界
着色料のような色の皮膚感覚の無い風景
灰色の空気が覆う街から見たこの世界は刺激に溢れていた
手にとった不思議な光を放つ実に舌を濡らし
その異形の者の息遣いに神経を張り巡らす
握り締めた柄は自らの命を守る力と誰かの命を消す力
それを示すような重さで
偽りの一体感と達成感に吐き気すら覚える



ここでの「死」なんて最も簡単なはずなのに
生まれ変わる事すら思い描くままなのに
その殻で居続ける私
数値化される情報には限りがあって
伝えたいのに伝わらないものに埋もれる



確かにそこに在って
感じられるのに触れられないあの人
あの人を守りたくて剣を振るい盾となれど
戦う為の手はその手を繋ぐことは叶わなくて
もどかしさに声を上げて剣と血に踊る夜は続く
疲れ果てた殻を落として鮮やかな夜が明け
薄暗い霧に包まれた朝がまた