今を逃げる

なんだか今日はおかしかった
強迫観念にも似たそれに駆られた
何も無いところへ行きたかった
正確には自分がなんでもない人になれる所へだ
何もかもが煩わしかった
いつまでも鳴り響く街の喧騒
幹線道路を行き交う車の音
携帯の着信音
自分を取り巻く人の繋がり
新しく生まれ変わりたいとかじゃなくて
全て脱ぎ捨てたかった
その後の事を何か考えているわけもなく



どこを通ってそこへ来たのかは思い出せなかった
灯りは自分の車のヘッドライトだけ
そこからは遠くの方に小さな小さな街の明かりが見える
その小さな街の灯りの一つ
その小さな灯りの中で
その小さな人間はその小さな心で
その小さな心の中の小さな悩みは
ここから見たら無に等しくて



風が穏やかに笑ってた
なんだか憑き物が落ちたみたいに肩の力が抜ける
ポケットの中の潰れた煙草に火を点ける
不恰好にも光る煙草は自分にも似ていて



皆が幸せになれたらいいな
皆幸せになりたいだけなのにな
楽園みたいな所まで後どの位なのかな
ねえ 神様?