歌鳥風月

celame2006-05-03

獣達も寝静まった真夜中に
こっそり抜け出そう
月明かりを頼りに歩こう
ヒミツの場所があるんだ
誕生日にもらった竪琴も持って行くから



冷たさが香る針葉樹林を抜けて
繋ぐ手はあったかくてちっちゃくて
初めての感覚にほんの少し大人になれた気がして
自分の存在を感じられて
それを守る為ならなんだってできるって思った



息を潜めて
心の音が高く速く
知らない感情に浮かれて



咽かえる様な潮の匂い
返しては寄せる波さえ眠っていた
滴る雫を避けながら君を連れて
振り返ったら足が竦みそうだったから
真っ暗な岩窟を足音を鳴らしながら辿り着いた
開けた空洞
空まで貫いた空気が月を呼び込む
振り向いた僕に艶やかな笑顔で
なんだかとても恥ずかしくなった
俯いた目に入る月を映した水鏡
弾む息のまま喉を潤す
海の味はしなかった
押し寄せてくる闇の恐怖



灯りに佇んで歌い出す君
その歌声は光にも似て
暗く湿った洞窟を優しく照らす
守られていたのは僕の方なのかな
この時のこの風景の為にここに来たんだ
持て余していた溢れ出す時間を
沈んだ船のように止めたいと思った