蒸し暑い夜は思い出してしまうんだ(1)



昼間の熱を溜め込んだアスファルト
蒸し返して夜の風を暖める
湿った空と相まって夏を演出する



何人か誕生日の早いやつらは免許を取っていた
せっかくだからドライブしようと事になった
もう既に10時半位だったので乗り気なやつは少なかったが



結局は
ぼくが運転でケンタが助手席
マサナミコが後ろに
いつもの近所の四人組だ



「あは やっぱりいつものだね〜」
「仕方ないね〜 おれら馬鹿だし」
「こんな楽しいのにね みんな勿体無いね」
「人生さいこー」
「んで行き先はよ?」
「やっぱ海でしょ 夜のドライブっつったら女の子も居るし」
「ちょっとアンタ 何する気よ(笑)」
「ん〜 どうせならさ? 怖いとこ行かね?」
「お いいねー 肝試し?」
「えー アタシ 怖いの苦手ー」
「うそだろー? どっちかっていうとお化けを退治しそうな・・・(笑)」
「ひどーい(笑)」
「いて つねんな! 事故るだろ」
「ケンタは?」
「ん? 肝試しいいよー 季節柄丁度いいし(笑)」
「おっけー んじゃぁセバスチャン 肝試しできるところまで」
「おい! 誰がセバスチャンか てか肝試しできるところなんて知らないよ(笑)」
「あそこは? なんだっけダム越えたところにある病院跡地?」
「あ〜 ○○ダムの先の? ナミコ詳しいじゃん(笑)」

「それネットでよく見る所だよね? やばくないの?」

「そこなら結構近いし有名だからいいんじゃね? 決定ー!」



ウィンカーを出してハンドルを切る



「曲は〜? とりあえずアゲとく?」
「おーアゲアゲでよろしく」
「いけいけ〜 もっとスピードだせー」
「この時間だとさすがに他の車ないねー 気持ちいー」
「なんか雰囲気のある所になってきましたなー」
「怖いこと言わないでよー なにかあったら囮になってもらうからねっ」

「ナミコはえげつない事して逃げそう・・・」

「お化けより怖いな それ」
「ふふふ・・・」




山道を登りダムの脇を走り抜けている時だった
・・・ザざざ・・・ッ

「ん? 何だ今の」
「どうかした?」
「今 なんだか雑音入らなかった?」
「え? わからないけど 曲?」
「またー 怖がらせようとしてー」
「そーゆーのはなしー」




妙な盛り上がりをしながら現場へ到着
ハザードを出して適当な所に停まる



「ついたよー」
「え? ここ? なんもなくね?」
「あ〜 病院跡って言ってもね 廃病院じゃなくてただの跡地なの」
「えー つまんねー」
「まぁ ちょっと降りますか」




車のドアを開けると肌に感じる冷たい風



「なんかここは涼しいのな」

「・・・そういえば でもなんか涼しいって言うよりは・・・冷たい?」

「あ〜 そんな感じかも やっぱなんかいるのかね」

「なんか嫌な空気ー 気持ち悪い」

「なんもないと拍子抜けだなぁ」




ぶらぶらと歩き回る



「な・・・なんかさ 土が重たくない?」

「てか空気もなんか重い感じがする・・・」

「あたし気持ち悪い」

「車酔い?」



「!? うおう!!?!」

車の方へ走り出すケンタ

「!? うお なんだ!?」
「きゃーーーーーっ」
「あ ケンター 逃げるなー」


「どうした?!」


逃げ出すケンタを全員が追いかける
車と停めた所でようやく追いつく
みんな肩で息をしている



「ハァハァ・・ なに? どうしたの?」
「はー 疲れた」
「みんなはやすぎー 置いていかないでよー」
「なんかバキッって踏んで思わず逃げた」
「木かなんかだと思うけど骨とかだったらいやだな(笑)」
「それ洒落になってねー」
「あはは ケンタのお陰で怖い思いもしたことだしそろそろ帰りますか」
「さんせー」
「りょーかいー」




全員が車に乗り込み安堵の息を漏らす
車のキーを回すが掛からないエンジン