蒸し暑い夜は思い出してしまうんだ(2)

「あれ おかしいな・・・?」
「調子悪かったっけ?」
「いや・・・そんなはずは・・・」
「早く帰りたい」
「なんか俺寒くなってきたかも・・・」




数十回目でようやく掛かるエンジン
一抹の不安を覚える



「なぁ 帰り道なんだけどケンタ地図いい?」
「ん? おう はい」
「今 ここを通ってきたんだけど 帰りはこっちで行こうかと思うんだけど どうかな?」
「ん〜 道はよく知らないからお任せするよ」
「なんでー なんかあったの?」
「ん〜 たいしたことじゃないんだけどさ」
「・・・」
「さっきのノイズとハンドルが重たくなったのが気になってて」
「言ってたね そういや」
「んで今のエンジンの掛かり具合でさー」
「なんかあってもイヤだしねぇ」
「もう既に何か連れてきてたりして(笑)」
「そういって何かあったらどーすんのよー」




重たい空気を振り切るようにその場から走り出す
バックミラーに映るマサの顔が青ざめている



「マサー? 顔色悪いぞ?」
「なんかさみい」
「まさか・・・?」
「ちょっとー これ掛けて掛けて」
「もう少し言ったら休憩できそうな所あるからそこで休むか」




眺めの良い山の中腹
寂し気な自動販売



「気持ち悪いとかじゃないの?」
「すぐ良くなるよ 大丈夫」
「タバコ吸うー?」
「あ 俺も吸うー 落ち着かなくて」
「はーい」
「俺そこでコーヒー買ってくるけど?」
「4人分適当に買ってきて〜 まーちゃんには暖かいの」
「おっけー」
「あ 俺も行くよ 一人じゃ持てないだろ」




自動販売機の所からは景色が一望できる
何処か歪んだ闇の景色



「昼間だったら綺麗なのかなー」
「今日は何見ても怖いよ きっと」
「ケンタのお陰でな(笑)」
「マサ大丈夫かな」
「うん」




バタンッ!
車のドアを閉めて青ざめた顔でこっちをみているナミコ



「?」
「?」



「後ろー!」



振り返る二人


「!?」
「!?」


そこにはケンタの肩に手を置いた真っ白な女性

「!!!!!!?」
「うあああああああああああああああああ」




一目散に逃げ出す
ナミコの所についてもう一度後ろをみるが誰もいない



「死ぬかと思った・・・」
「おれやばいかな・・・?」
「女の人・・・?」
「ちょっと見てくるね」
「え? やめなよ あぶないよー?」




恐る恐るその場所に近づく
女性が立っていたと思われる場所は切り立った崖



マサの気分も帰りには良くなった
ひと夏の経験というには珍しい夜になったが
いつもと変わらない四人だった
ケンタの肩にくっきり残った手の形に似たアザを除いて