新しい生活

新しい部屋の匂い
生活感の無いただの箱
エアコンも無い為に窓を開け放っている
外から電車の走る音が入り込んでくる
電車の音に掻き消されない様に話す声も大きくなる



全てのダンボールを入れ終えて一息つく
ダンボールの位置を微妙にずらしてアートを気取ったり
これはこれでこのままにして置きたい気もする
紐解かないと生活できないのだけれど
一旦座ると気力をみんな削がれてしまってなんにもやる気が起きなくなる
こんな事なら座らなきゃ良かった



扉が開いて彼女が入ってくる
コンビニで買って来たサンドイッチと冷えたビールで乾杯
花火の打ち上げ音が聞こえる
慌ててベランダに出てみる
こっちでは花火が見えるのか
いい所を選べたな



べとつく肌と花火とビール
ベランダからみる部屋は無機質に穏やかだった
その部屋にこれからの生活を重ねるとなぜか背筋がゾッとした