静寂の雨の中

似つかわしくない物思いに耽る
揺れる火影が心の輪郭を浮き上がらせる
優しい嘘を何故かける事ができなかったのだろう
嘘を許せない自分の弱さを認めたくなかったのか
目を凝らせば本当の事なんて僅かにも残ってないのに
伸びて踊る陰影は掘り下げた心の闇
窓を音も無く濡らして行く雨に止まないでくれと願う
吐き出した溜息を掻き消し続けてくれ



使い古したケータイに溜め込んだメールを捲る
新しいケータイに替えたらこれも見なくなるんだろう
思わず笑った
辛い時に救われた
楽しさを共有しあった
怯えてる背中をそっと押してくれた
それぞれの場面毎の一行のテキスト
淑やかに降り続く雨に止まないでくれと願う
濁った自分を溶かして洗い流してくれ



少しの距離を濡れたまま歩く
熱を帯びた体を包んでくれる
ひんやりと静まり返った車内
絡まった思考が膜を張るみたいに伸びていく
纏った滴を眠たくなるようなワイパーが弾く
電灯を反射する車道を宛ても無く走る
濡れた路面から響く雨の日特有の走行音
渋滞や音楽なんて野暮なものは一切無い
ガラスにぶつかる雨に止まないでくれと願う
眠たくなるようなワイパーとの時間をもう少し