砂の器

掌から零れてくよ
たくさんの言葉が
きみに言いたかった言葉や言った言葉たちが
さらさらと音をたてながら零れてく
きらきらと光放ちながら落ちてくのはとても綺麗なんだ
見惚れ魅入る
その美しさ以外の感覚が止まってもその美しさを止める事はできない
ただただ見続ける瞳はもう眼としての役割は果していなくって
見ている自身がその零れる言葉になって
その中から惚けた自身を見ているんだ
砕けて失っていく言葉の美しさに
数え切れない程の愛の言葉を紡いで来て
同じ数だけ罪を積み上げてきた
もう何を言っても自分の声と言葉は何よりも軽い
伝えたい思いを音に換える事さえ赦されない程に
残酷な程に軽い想いは薄く鋭くなってく
存在に耐えられない言葉になりきれなかったもの
ぼんやりと影の中に鬱積してく
時折思い出させるように恨みを晴らすように顔を出す
あの時はこう言えばよかったんじゃないの?
と皮膚の薄い所に心の柔らかい所に傷をつけては影の中に戻っていく
掴んで紡いでは声に換える言葉に一貫性なんてない
嘘も本当も表も裏も
ただそこには自身の声と想いが交じり合って産まれた言葉という奇跡にも似たものがあるだけ
自身の殻はきっと砂でできていて
自身の中を外の風に乗せてきみに届けたいと願うから声と言葉は交じり合う
さらさらと素敵な音になって
何も言わなければただ崩れてくだけで
もう何かを言わない事で後悔なんてしたくないから
自分には言葉にする事しかできない事を自分が一番良く知ってる
だから何度でも言葉にしよう



好きだよ