妖艶香水

赤い蛇が体を這いずり廻る
鼻をつく水と香の匂いが篭った部屋



這いずり廻った後には光の筋が
朦朧としたアタマに触れる



初めからその獲物を狙っていたかのように
それを絡め取る
嬉しそうに濡らし続ける



そのぬるりと絡みつく感覚に眼を向ける
薄暗い部屋に浮かぶ碧い瞳と紅い唇



妖しい微笑み
景色が歪む
瞳に呑まれる
波が押し寄せる
カラダを突き刺す視線
貫かれ赤い飛沫を上げる
恐怖とも畏怖とも取れる感情に
動けなくなる
カラダの奥が凍る



香の匂いと混ざる獣の匂い
体が波に合わせて震える
ラクタのような構造
何も見えないから明らかになる
存在を確かめるように



漆黒の髪を掻きあげ
淡く光る肢体を揺らす
光る波が残像を作り
肢体のヌメリがそこに繋がる
赤い蛇がその間を貫く
付けられる標



薄く開いた口に注がれる
喉を焼き尽くす水
思考は奪われ
波が支配する
赤い蛇になる
光の海に沈む



静と動
善と悪
光と闇
目に映るのはぼやけているのに
はっきりと感じられる色調



悪夢の夜が明け
傷痕だけが赤く疼き
闇を待ち焦がれる