2005-01-01から1年間の記事一覧

食事に愛と言う名のスパイスを

「私としたい?」 そう言って来たのは女の方だった 僕の事が好みだと言う たまたま寄った酒場のカウンターで話しかけてきた 少し話しながら 短めのカクテルを3杯程呑んで 川沿いを歩いている時だった 「それは商売かい?」 「いいえ お金はいらないわ なん…

夏の匂いと草の露

熱を帯びた祭りの火が消えて行く 森には普段以上の静けさが降りる 残った薪をくべながら夜空を眺めてた ランタンの光の漏れるテント 寝静まったテント なにやら押し殺した笑い声が聞こえるテント 森の梟と虫の音が響いてくる そういや友達は虫の音を雑音だな…

心象風景

キスして 手振って またあなたの居ない生活に戻ろうとしている スピーカーから流れる 緩いメロディを 柔らかな歌声が 優しげに歌い上げる その一つ一つの音につられて あなたとの何日かの時間も流れ出す 手を振ったときの寂しさよりも たくさんの淡い時間 久…

霧雨

しとしとと顔に纏わりつく 細かい水の玉 世界が少し重たくなったように 世界の歩みを遅らせる 車も人々も木々さえも 彼女が好きだったこんな空模様 たまにはこんな天気も必要なのよ と悪戯に笑った彼女 雨で景色が滲む 涙で景色が滲む 全ての境界線がぼやけ…

透き通る世界

ルールはない モラルはない リーダーは居ない けれど「ナンデモアリ」じゃない 相手は自分を写す鏡 自分は相手を映す鏡 自分を誰かに押し付けることもなく 自分を自分に押し付けることもなく 境界線なんてない 言葉なんて必要ない セックスすら意味がない 自…

時を重ねて織っていく

生まれて来てくれてありがとう 巡り会わせてくれてありがとう 一体何に感謝していいかわからないけれど ありがとう 同じ時代 同じ時間 同じ世界 同じ場所 遠くても共有できるもの 嬉しく思う 誇りに思う 約束があるから 時計を進める事ができる 声が聞けるか…

隣の人

多くの人で賑わっている 屋台で買って来たたこ焼きと缶ビール すっかり日が高くなった 今は既に太陽はビルの向こうに沈みかけていて見えない 彼方から迫り来る宵闇 薄く掛かった雲が夜と昼を繋ぐ 不吉なようなそれでいて鮮やかなグラデーション ビルの隙間か…

求心

あなたにふさわしい私になるわ 絶対振り向かせて見せるわ そうやって私は生きてきたんだもの ここで諦めたら私じゃない あなたの大事な人を一人ずつ消しゴムで消していけば いずれ私が一番になるかしら

螺旋

ひとり またひとり 傷つき 倒れていく 崩れ落ちて 砂となって 消えていく 手足は動かす事ができず それを見ている 喋ることもできない 倒れていくそれらは 最後に何かを叫んでいる 聞こえない 最後の一人も倒れ そこには何も残らない 誰も居ない 何も無い 音…

イツカラココニイタンダロウ… 瞬きをする度にWebにその瞬間の映像が共有される 乗り物の発明は地球を小さくした そしてWebの発明は人生を小さくした 人生のログは常に共有され いつでも回覧する事ができる 他人のいつか 他人のどこか 他人のなにか 他人の人…

オドリツヅケル アンドロイド

コンビナートの明かりが空をオレンジ色に点滅させる 遠くで定期的な蒸気が音を立てる 金属が擦れ、衝突する音が響く 周りは靄に囲まれ 空と海の境目は闇と汚れた空気で見えない 女は体をくねらせ舌を絡めてくる 私はただ女に体を任せる 私の熱くならない体を…

あなたは何所にでも居てくれる それを捕まえようと足掻く

風に乗って懐かしい香りが 鮮やかな彩りが脳裏を過ぎる 思わず息を呑み 目を奪われ 振り返る 一瞬の幻であっても そこにあなたを見つける 街の片隅に 喧騒の中の足音に 風の運ぶ匂いに 木々の間から漏れる光に

細く儚い糸で繋がれた未来へ

今日は皆でアウトドア 魚を釣って焼いて食べて 川で泳いで 温泉行って 目一杯遊んだっ! すごい楽しかったっ! 一つ不満があるとすれば 一緒に遊んでいる男友達の中に 秘密があるという事 別に言ったっていいじゃない なんで隠すの お陰でちょっと仲の良い振…

半身

なんとなくわかった 君なんだなと それまでのタイル状に貼られた緊張が その一瞬の笑顔で消し飛ぶ 初めて見たときに 初めて話したときに 初めて触れたときに 初めて優しくしたときに 初めて会ったのに ずっと前から 何もかも知ってるような既視感 空の海に沈…

ヒトノカタチ

いつからだろう ここにいたのは いつからだろう ねむらなくなったのは そもそもねむるって どういうこと? 扉が開いて男が入ってくる 男は自分のモノをその口の中に入れる わたしはうごくことができない どろりとした液体が口の中に注がれる 事が済むと男は…

メールだけの関係、

顔も知らない彼女を好きになってしまった 彼女もオレの事を好きだと言ってくれたお メールだ 件名: ('-'*)オハヨ♪ 本文: おげんき〜? 今日も一日がんばろぉ★o(^▽^*)/♪ 返信っと・・・ 件名: ウイッス! 本文: ちょっと睡眠不足だけど まだまだ大丈夫 …

前の席の男が空ろに俺の向こうを見ている 意識はこちら側には無いのだろう 何が楽しいのか Webはモノじゃない 触れないし こんな事を考えて 果ては自分は一体何なんだろうと考え 今日も最低な気分で眠るんだろう それが自我、自分の確認、人間の証明 もし哲…

重なる悪戯

再開したのは偶然だった 飲み屋とトイレの前で 話しかけてきたのは向こうだ なんでもない顔をして 返事をして その場から去る なぜか一緒に帰る事になってしまった 最悪だ どんな顔をしてろと言うんだ 会社のやつらには 明日からかわれるだろう それを考えた…

心に溜めた夢に浸かる

体は眠っている 深く、深く 眠りの奥へと潜って行く 深く、深く 周りの景色が濃くなってくる 暗く、暗く 周りの空気までも色を帯びてくる 碧く、碧く それは水よりも重く、体にまとわり付く 蒼く、蒼く それは少しずつ沈んでいった 気が付いたらこんな深い所…

ワタシタチハイレモノ 今まで遺伝子達は人間というイレモノを利用してきた 時間という大敵に対抗する為に やがて遺伝子は文明を手に入れ 情報という媒体に乗り換え始めた Webという世界を手に入れた 今までの箱舟は廃棄処分? それともリサイクル? 小さな小…

退屈な世界

いつだって どんなときだって あなたのことを考えているわ あなたも同じ気持ちでしょう? じゃないとおかしいわ あたしが思っているのに あなたが思ってないなんて だっておかしいでしょう? おかしいのよ どうしてこれだけ想っても届かないのかしら どれだ…

カコモミライモキロクサレル 光すら止めて保存できるようになり この瞬間のこの場が一瞬の光のようであり永遠の光になる 誰にも見られていないようで誰にでも見られている そんな世界 あの日手の届かなかった光を手に入れ 時間をも手に入れようと キロクガセ…

惹かれ合う糸に縛られる

少し疲れたとき 眠る前 君の事が頭をよぎる 誰かの仕草や ふとした瞬間 君の姿が重なる 別に探しているわけじゃないのに 君が出てくるから 会いたくなる なんかずるいよね きっと 惚れた方が負けって事なのかな こんな負け方なら喜んで負けるよ ずっと騙して…

涙をココへ置いて行く 未来を奪う為に

地面から生えている人工の樹 蔓から垂れている灯りが私と車内を定期的に照らす 流れる音楽は さっきまではお気に入りだったのに・・・ 薄く鈍い光を反射するその板を窓から投げる 最初から続かないって解ってた 求めるものが違うから 見ているものが違うから…

香りの儀式

季節に少し疲れた草木のような灯りが漂う 湯気が立ち込め身体に吸い付く 小さなバスに貯められた湯に精油を落とす 光の点滅のような音と共に 淡い波紋を立てる その波は空気を伝い この小さな部屋を覆い尽くす 息を吸い込んで 鼻腔の奥から脳、心へとその波…

アンドロイド ノ カゾク

妻が亡くなり私は人生を見失っていた ただ仕事をして家に帰る それの繰り返しをしていただけだった それに見かねた友人が薦めてくれたのが 家政婦のアンドロイドに妻の記憶の一部を移植する事だった 今の科学力では全ての記憶をアンドロイドに移植する事がで…

何も言わずに抱きしめてみる きっとそれは男の小さな権利

少し話すたびに 僕らが生きてる証のように 白い息がこぼれ落ちる 人の肌が恋しくなる季節 他人との距離が少しだけ近づく 貴女の手を握ってあっためたくなる 多分 僕らは普段 言葉が多すぎて たまに伝えたい事がぼやけるんだ この息を吐きかけた窓にできた曇…