male

偶に絡み会って解けて消えて

「海がみたいわ」 「困ったときの定番だな」 真夜中の海は一色で塗り潰されている 「なんだか吸い込まれそうで怖いわね」 「夜の海には魔物がいるんだってさ」 「例えばあなたみたいな?」 「さらっと酷い事を言うね」 いつもは落ち着くはずの波の音もどこか…

ゲーム

こんな関係は健全じゃない 不自然だよって宙を漂う言葉 体の相性って訳でもない なんだって一緒に居るんだろう 危険を愉しんでいるようにも思えない 月の無い静かな夜に他愛のない話をしながら 隠れるように街の喧騒から離れる 縛られて繋がれている全てから…

読書

本を読んでいる俺の膝の上に遠慮なく乗っかってくる 重たいし暑苦しいしくすぐったいし そんな事を思いながら一目見上げる どこか調子の外れた鼻歌を歌っている ころんとして大きく瞬きをする瞳 悪びれるどころか 楽しいよね?って言いかけてきているみたい…

手を引いてこれが最後の曲目

ずるいよ そんな安っぽいドラマみたいな台詞で 僕が返せる答えを知っているくせに 日常を演じる事の滑稽さに呆れて声もでないよ 最後の時まで互いに決められたように微笑んで 悲しくて優しくて 切なくて幸せで 心の溜りに 積もった歳月 重ねた記憶 しってる…

彼と彼女の描いた・・・

仕事から帰ってきて部屋の扉を押すとき 飲んでいるグラスの中の氷が音を立てるとき 電車から眺める空に筆を軽く滑らせたような雲が流れていたとき 袖を引かれ戻される絵 灯りの少ない何処か寂しげな畦道 絡めた指先に月を映す指輪 冷たい夜の光りを帯びるピ…

歌鳥風月

獣達も寝静まった真夜中に こっそり抜け出そう 月明かりを頼りに歩こう ヒミツの場所があるんだ 誕生日にもらった竪琴も持って行くから 冷たさが香る針葉樹林を抜けて 繋ぐ手はあったかくてちっちゃくて 初めての感覚にほんの少し大人になれた気がして 自分…

星に願いを

飲み過ぎてふらふらしながら歩く まだ夜の空気は肌に刺さる いつから手を繋がなくなったんだろうな 夜に疲れた人を集める自動販売機の明かり 誰も通らないような所で誰かに見つけて欲しがっているみたいで 酔い覚ましの苦い珈琲を買う ミルクが飲めないから…

白い威厳を放つ悲しみの塔

仕事を早く切り上げて幹線道路を飛ばす 日が落ちる前には着きそうだ 夕日が視界を遮る たまらずサングラスをかける 震える指先に苛立ちを覚える 動作のひとつひとつに余裕がない 受付を済ませてリネン張りの廊下を早足で抜ける 表札を見つけて部屋をノックす…

回り続ける世界を横目に時を止めた部屋

シーツの擦れる音 闇に響いて カーテンの隙間から見える世界は止まっていて 一切の時間を指し示すもののないこの部屋 甘い息遣い 頭の中に部屋の中に 世界から切り取られている部屋で 世界との繋がりを確かめるために 重ねる感触 ぬるくてずっと溺れていたい…

擦り切れた心の断片

灰色の雪が降る仄暗い毎日 そんな中で君に会えてよかった 心からそう思うよ 本当だよ 君からみたら信じられないかもしれない 他の人がみたら軽蔑するかもしれない 結果や過程はどうあれ この言の葉は紛れも無く それもその中のひとつでしかなくて いずれ い…

名も無き丘

紅い爪に細い一本の煙草 気怠るく煙を吐き出す こっちに気付いて微笑む彼女 穏やかな口元に夜に映える挑発的な唇 彼女が描きだす影としっとりとした動き どこか危うくて 霧のように儚く佇む その霧の中に迷い込む 人のものだと思えば思うほど欲しくなる 吸い…

自分が知っている自分なんて本当にごく一部なんだ

「泣いていいんだよ」 って言いながら抱きしめてくれたあなた ずっと前からそうして欲しかったように 小さい頃にあやしてもらっていたように なんだか懐かしくて 喉の奥に甘酸っぱいモノが溢れてきた とめどなくて とまらなくて 夜の温度に痺れた手の甲に落…

馳せる夕焼けの小道

君が帰ると部屋が暗くなった気がする お気に入りの香水も心なしか濁って見える 君に見せたいだけだった 僕が見てきた世界を 僕が知り得た事を いつの間にか君とみたものの方が多くなってた 重かった足取り 背負っていた荷物 互いに分け合ってた これは甘えな…

寝惚けた目覚まし

AM 7:00 携帯電話が朝を知らせる 無機質な着信音が煩わしく響く ・・・んん・・・うるさ・い・・・ 目を擦りながらその音を止める カーテンの隙間から白い朝日が差し込む AM 7:20 余りに規則正しい目覚ましを全て止めて 起きて仕度をしなきゃ・・・ と思いな…

最後の楽園

お気に入りのポイント 気分が沈むとここに潜りにくる ターコイズな空とエメラルドの海 目を細めるとはっきりとした境界線 力を抜き呼吸を整える 空を見ながら小さな覚悟を 体を世界に委ね深海に沈めると 自分が体から離れるような錯覚に陥る どんなに荒れ果…

オトコノコ ノ キモチ

たまに 手を繋いで欲しい 体に触れて欲しい 髪を撫でて欲しい 笑って欲しい 社交辞令でいいんだ 作り笑顔でいいんだ 他の人に見せる顔でいいから 馬鹿みたい 特別になりたかったはずなのにね 特別になったのにね たまに 背中を押して欲しい 手を差し伸べて欲…

缶コーヒーが飲みたい時

あなたが喋ると 思わずその口元に目が吸い寄せられる 僕の時間が止まる 僕が忘れてきたものを持っているあなた 笑い合えると繋がった気がする 階段を上り外へ出ると丁度雨が降ってきた 土砂降りだ 地下の駐車場の入り口まで走る 途中の橋を渡るときにふと目…

いつかの果て

一年中暖かくて ずっと慎ましい花が咲いていて 枯れることのない緑に囲まれている 芝生に寝転んでいるぼく じゃれてくるきみ 二人で笑い合って きっといつか きみといつか 何処までも続く時 何処までも見える空 その向こうで君と一緒にいれたら 常緑の中で過…

望むなら・・・ ね?

それしか考えてなかったんだ 過ぎ去る景色に頭が痛み始める 少し鈍くなった腕を必死に伸ばす 肌が風に溶けて空気がとろけ始める 流れる砂がまとわりつき 身体が時間と空間と混ざる 驚く顔が目に浮かぶ その時に話すだろう台詞さえ絵に描ける 物理的距離なん…

或る朝 在る花

いつもの朝 少しだけ時間のある朝 いつもはコーヒーだけのメニューに 焼きたてのパンとハムエッグを コーヒーと焼きたてのパンの匂いが 部屋を鮮やかに彩る まだ起きてこない君 夜遅かったのかな 白いシーツが規則正しく上下している 未来を掴み今を生きる小…

羽根を散らして鳴き続ける 夜の小鳥達

いつか慣れてしまうんだろうか いつか忘れてしまうんだろうか こんなに響き続ける声を 重なる旋律を こんなに暖かな肌を 重なる柔らかさを 光が射し込むまで 夜の闇に白い儚い羽根広げて 眠るのが勿体無くて踊ってみる いつか来るその時 考えたたくもないそ…

音と光が寝静まり 深海の奥でシーツの波が影を落とす

部屋の扉を開けると 行き場を失くした音と光達が寝息を立てている それらを起こさないように気をつけながら奥へ 音も無く彼女は佇んでいる 深海のような色に照らされて ゆるやかな波が浮かび上がる 全てが凍りつく時間の止まった世界 その海にそっと横たわる…

色鮮やかな音と共に 時間が戻る

クリスマスソングが街にひっそりと彩を添え始める 何時も最初にこのメロディを聞くと思い出す 安い給料でバイトに明け暮れていた頃 バイト仲間とする仕事も楽しかったし バイトが終わった後に 人気の無いところでタバコを吸いながら喋るのも刺激的だった 地…

五感が全て記憶している 感じて余韻を 追憶を

ついさっきまで君と過ごしていた部屋 ふとした死角に気配を感じ 振り返り 冷めた笑いが漏れる 君の気配で満たされた部屋 自分はとても小さいものに思える もしも外と内が境目だけで隔てられているのなら 君への思いの大きさに 自分が耐え切れなくなってるっ…

霧雨

しとしとと顔に纏わりつく 細かい水の玉 世界が少し重たくなったように 世界の歩みを遅らせる 車も人々も木々さえも 彼女が好きだったこんな空模様 たまにはこんな天気も必要なのよ と悪戯に笑った彼女 雨で景色が滲む 涙で景色が滲む 全ての境界線がぼやけ…

時を重ねて織っていく

生まれて来てくれてありがとう 巡り会わせてくれてありがとう 一体何に感謝していいかわからないけれど ありがとう 同じ時代 同じ時間 同じ世界 同じ場所 遠くても共有できるもの 嬉しく思う 誇りに思う 約束があるから 時計を進める事ができる 声が聞けるか…

半身

なんとなくわかった 君なんだなと それまでのタイル状に貼られた緊張が その一瞬の笑顔で消し飛ぶ 初めて見たときに 初めて話したときに 初めて触れたときに 初めて優しくしたときに 初めて会ったのに ずっと前から 何もかも知ってるような既視感 空の海に沈…

重なる悪戯

再開したのは偶然だった 飲み屋とトイレの前で 話しかけてきたのは向こうだ なんでもない顔をして 返事をして その場から去る なぜか一緒に帰る事になってしまった 最悪だ どんな顔をしてろと言うんだ 会社のやつらには 明日からかわれるだろう それを考えた…

惹かれ合う糸に縛られる

少し疲れたとき 眠る前 君の事が頭をよぎる 誰かの仕草や ふとした瞬間 君の姿が重なる 別に探しているわけじゃないのに 君が出てくるから 会いたくなる なんかずるいよね きっと 惚れた方が負けって事なのかな こんな負け方なら喜んで負けるよ ずっと騙して…

何も言わずに抱きしめてみる きっとそれは男の小さな権利

少し話すたびに 僕らが生きてる証のように 白い息がこぼれ落ちる 人の肌が恋しくなる季節 他人との距離が少しだけ近づく 貴女の手を握ってあっためたくなる 多分 僕らは普段 言葉が多すぎて たまに伝えたい事がぼやけるんだ この息を吐きかけた窓にできた曇…