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いまここに在る当たり前の幸せ

清潔なベッドに身体を横たえるキミ 繋がれた数本の管 この小さな管がキミの命を繋いでいると思うと涙が出た ここに来るまでの数日間は常に考えていた なんて声を掛けようかと それだけを考えて考えて考え抜いてきた けれどキミとキミを含めた周りの景色を見…

上手になんてできない だから何度でもやれる

僕らは飛び立つ練習をしてるんだ 途中で巣から落ちて死んじゃったりするのも居る お腹を空かせた強者に食べられちゃうのとか なんとか一日を生き延びて 合間に練習して飛び方を覚えて 少しでも遠く高く飛べるようになるまで それは砂時計の砂が一粒ずつ落ち…

暖を取らせてもらおうと足を踏み入れた古びた書店で

日に焼けた紙の匂いがする 物書きには甘く脳の芯を痺れさせるまたたびみたいなものだ 人を探しながら導かれるように奥へ歩いていく そこらじゅうに積もった埃 絵に描いたような書庫 起こさないでくれとでも言うように舞い上がる埃 足跡がくっきりと床に残る …

暗い手触りに心の羽がいくつ捥げても

鋼鉄の翼が暗い夜に輪郭をはっきりと見せる 夜と道が絡み合ってひとつになっている 宵闇一色に自分のはっきりとした存在感 その存在感がはっきりとわかるほど実感する孤独 孤独の手触りさえ伝わってくる 一定のリズムを刻み続けるエンジン 心地良い振動にそ…

名前の無い夜 そんな夜なんてそもそも無いのかもしれない

存在しない悪意から逃げるように目が覚めた また何か悪い夢でも見ていたのかもしれない 鈍い痛みを紛らわすように目頭を抑える うっすらとかいた汗が冷えて背筋を震わせる 深く眠るための薬も大して役に立たない 今度は夢を消すか見なくて済む薬でも頼むとし…

最後に自分に残されたもの それだけで

空ろな眠りの中で再現される 偶然触れた小さな手の優しさ 繋いだ手の手首から先は何もなくて 自分は無機質なエレベーターに乗っている 腰位の高さに手摺が付いているだけの簡素な作り 足場は全体的に淡い緑色の光を放っている 周りには同じ無機質な材質で作…

アイラの音

空から落ちる星屑 それは鉄屑となりこの地に積もっていく 酸の雨に朽ちていく錆びた街 赤く焼けた煉瓦と赤く剥がれた鉄の骨 赤くくすんだ赤くぼやけた赤い街 滴る濁った水がコンクリートに滲んで染みこむ 雨の染みこんだコンクリートと同じ様な月が照らす 荒…

少年と竜

少年は竜に憧れた 誰をも近づけさせない凛々しさ 大空を力強く引き裂いていく翼 空気をどこまでも震わせる咆哮 少年は剣に怯えた 鈍く冷たい光を放つ金属 何かを壊す為のものと 青年は剣を取った 誰が為に 優しい心に突き刺さるのは己の剣 青年は竜を前にし…

不眠症

いずれ眠れるだろう また目が覚めるだろう シャカシャカというノイズに眠りを妨げられて目を覚ます 耳から外れたイヤホン 音楽に合わせてプレイヤーの液晶にはイコライザが動いている その光を頼りに目薬を探す 乾いた目に染み込んでいく冷たい夜の感触 電車…

遥か遠く響く音

無意識か意識的にか普段は聴かないようにしている音楽がある 大体高校生の頃に流行った音楽が多い 大好きだった彼女に振られて 泣かないように大音量で耳に流し込んだ音楽 その場所から夢の中のような足取りで家に帰るまでずっと 同じ音楽を聴き続けてたなん…

涙は上に落ちることはないから そっちはきっと哀しむ事が無い所

今頃何をしてるのか どの辺りで遊んでるのか 想像も理も声すら及ばないその場所 穏やかな所だといいな 相変わらずのた打ち回っている俺を見てるか? 街中に華やかな音楽が溢れ始めるこの時期 降って来る白い羽根みたいな雪の先を見上げる なんでこの腕には翼…

二度寝

窓の外から小鳥の鳴き声。部屋には吹きたてのいつもの香水の匂い。フィルターでゆっくり淹れた薄めのモカ。飲み干した白いカップ。淵に僅かに残った緋。一人で居るときに響く時計の針の音がキライ、そう言って壁に掛けた音を刻まない時計は7時を指している…

最近空を見上げましたか?

携帯の電波すら届かない 夜に街の灯りが見えない 脱いだコートには染込んだ雪 窓の外には見慣れない空 何も遮るものがない空気は数多の星を映していた つい普段見ている空と比べてしまう 酔った目で見上げる気が重くなるような重く濁った灰色の空 どちらが本…

心海ダイバー

水しぶきを上げずにすっと落ちる 引かれる力に任せてカラダの力を抜く 水の中はいろんな魚の群れが泳いでいたり または生き物の気配がまったくなかったりする カラダを守るものなんてなにひとつ無い 何が起こるかわからないから 予備の酸素ボンベすら背負わ…

ネコ

「なーっ」 甘いその声に振り返る ゆったりとしたリズムで優美に歩を進める 尻尾をゆらゆら揺らして 素っ気無い態度に誘うような眼つき 小悪魔みたいに 秋の色鮮やかな陽溜まりに溶け込む 風に耳をぴくっとさせながら夢の中 柔らかく目を瞑った寝顔 天使みた…

ケータイの電源を切るみたいに

人との関わりを切れたらいいのにな 誰でもいいから傍に居てくれ ただ居てくれるだけでいいんだ 声を掛けないでくれ 繋がりたくない関わりたくない 寂しすぎて独りで居たくて 風の音すら届かない場所に来た ありがとうって言いたかった 生まれてきてくれて 生…

夏の終わりと秋の訪れの狭間で

少し気怠るいプールの帰り道 もう夏も終わりだからなんて言いながらはしゃいでいた 外は少し暑くて 体は心地よく冷えていて 眠気が世界を支配している 「氷」と掛かれた旗が揺れている店内 冷たいアイスかジュースか迷う みんながアイスにするなら自分も そ…

収集

ぎらぎらしないライトをつけて コレクションを眺めているんだ 日が暮れるまで・・・ね もう今更やりたい事とか夢とかもね 若い人達に言わせると こういうのを枯れたとか言うんだろう? そのうちわかるよってみんな優しく微笑んでたろ? こういうのはだれかに…

心休まる場所

ただ縁だけが続いてるような仲 気が合いすぎてキライになるような仲 なぜか判り合ってしまい遠くにいても気が付いてしまう こうやって何か合った時にいつも一緒にいる そんな情けない泣き言にもにたセリフでグラスを鳴らす わかっている事を言われるのは未だ…

そういえばあの日も暑かったっけ

夏の終わり 太陽を称える様に短い命を羽の音に変える蝉 耳障りだったけれどこの時期はいつも物悲しく響く ひとつまたひとつと静かになっていく 生命を謳歌していた季節が流れてどこか悲哀を感じさせる 鈴虫達が鳴き始めそんな夜に彩りを添えて 熱が溜まって…

記憶

記憶はいつも鮮やかで どんな歌もどんな文章も 過去を綴る時は優しく 今の自分だったらあの時もしかしたら 違う未来を選べたんじゃないかって どんなに些細な事でも戻りたいと願う 記憶の中の自分は今の自分に見られてるなんて思わずに 止めようと伸ばした手…

どんな出来事でも少しずつ小さくなっていって消えてしまう

どんな出来事も例外なく みんなとても忙しいから 大事な事なんてたくさんあるから だからこそって 忘れたくないって足掻いてるんだ 突然の告白 戸惑う人 引き止める人 それが悩んで選んだ結果ならと受け止める人 頑張ってと元気付ける人 初めてじゃないけれ…

 昨日、今日、明日

明日なんか見たくなくて膝を抱えてる 全てを拒絶するように時間を止める様に 内なる目は決して啓かないで 生きているという今を楽しむ 昨日の事は忘れて明日の事なんて考えないで 何事も無常に過ぎ行く決して留まらないで 昨日に追いつかれる事に怯えながら…

翼の折れた空を見て

またこの感じ わかってる 自分だけじゃないって 一人でいるって言う事は別に寂しい事なんかじゃないって ふと見上げた空のどこまでもどこまでも広がる色 あまりに澄み切った色に立ち竦んで怖気づく 弱くて泣き虫なこの体が道に迷ったみたいに 手を広げている…

寂しがりな甘えん坊達の溜息

茹だる様な昼の暑さを溜め込んで景色を揺らす 夕闇は暑さに微笑み掛ける様に大粒の雨を降らす 雨が止むまで 誰かに寄り添いながら 刹那とも思える風が吹き貫ける 昨日にも明日にもないどこでもない今 劣情も 慕情も 約束も 駆引も 言葉も 惰性も 嘘も 情も …

明る過ぎる吟月に叢雲

咳が止まらない 道に迷っちゃった こんなにも明るいのに 深く眠りこける体 夢の中でも夢をみてた 目が眩む朝焼け 何も無かったみたい なんでも手に入れて来た 愛と欲に塗れながら 揃ったら虚しくなったよ 鉄を噛み締めながら 渇いた喉に命の水を 黒い天使が…

落日に想う

夕暮れの河川敷を汚れたシャツで歩いた 振り返ると遊んでいた場所が遥か小さく ずっと夕方だったらいいのにって思った 夜でもなく昼でもなく みんなで走り回ってられる唯それだけの時間 家に帰りたくないわけじゃないんだけど ふてくされた気持ちなんとかし…

ずっと昔から続いてきた月と海の遣り取り

爛れて落ちる沙の楼閣 これでよかったなんて云うつもり? 夢から冷めてもまた夢の底 頭上には幾重にも罪重なった夢の層 醒めても褪めても繰り返す やがてあなたは諦める 沈む魂は全て有耶無耶に 落ちた粒は溜まりて流れる 母に抱かれる滄海に淀み心熾きなく…

狂戦士達の鎮魂歌

飼いならされた従順 掴み取れない指先 味を分けられない舌 心を感じれない心 唯一直向きに進み続ける 死ぬ為だけに生まれ死ぬ 闘いの瞬間に悦び悶える 名誉なんて必要ない 牽き止められる理由なんて下らない 守るものなんて要らない 未来なんて見えない 陽炎…

生きとし生ける

反復して拡がる痛覚を刺激する波紋 目を閉じて畏怖の色と同じ世界へ身を置く 波紋は体へ拡がり色をも歪ませる 体も心も疲れ切って迎える深黒の夜 月や 山や 海や 空や 生きている事の意味 わかる日がいつか来るのかな 消えてしまいたいという儚い溜息 やり過…